「マジで?! あの先生、今年は間違いないって言ってたのに! 結局、また今年も予算付かずかよ」
神坂課長が善久君の報告を受けているようです。

「はい。先生が言うには、COVID-19の影響で病院の収支が悪くなったので、機器購入予算を削減することになったそうです」

善久「どうも、あの先生は信用できないよな。あー、それにしてもあの商談がなくなると、2課としてはさらに厳しくなるなぁ」

少し離れた席に本田さんと石崎さんが座って会話をしているようです。

石崎「神坂課長って、感情の起伏がめっちゃ激しいですよね。さっきまで巨人が強いとか言って喜んでいたのに、今は怒ってます」

本田「いや、今は怒りから哀しみに変わったみたいだよ。ほら、悲しそうな顔をしてる。(笑)」

「たった20分程度の間に、よくあそこまで感情をコロコロ変えられますよね」

「それがあの人の良さでもあるんじゃないか?」

「そうかも知れませんね。すごく怒られたなと思っていると、数分後にはジョークを言って来たりしまうから」

本「俺はそれで結構救われているよ」

「実は私もです。(笑)」

「わかった。なくなったものは仕方がない。そういうことも想定しておくべきことだからな。ここは、全員の力で乗り切るしかない。ピンチはチャンスだからな!!」

「哀しそうな顔が一転して楽しそうな顔になりました。(笑)」

「おい、石崎! お前の同期の商談がひとつ来期にズレ込んだ。ここは同期の連帯責任として、お前にも頑張ってもらうぞ!」

「えー、勘弁してください。私は今期、100%以上の見通しを出しているじゃないですか!」

「仕事というのは、絶好調の奴に振るのが一番いいんだよ。我が愛しの巨人軍のように、連戦連勝のチームには勢いがある。仕事も同じだ」

「マジかよ。もうあの人、嬉しそうな顔に変わりましたよ」

「まるで、感情の四季を楽しむかのようだね。春夏秋冬が巡ってまた春が来たって感じ。(笑)」

「なんだ、少年。文句でもあるのか?」

「いえ、ゼンちゃんと力を合わせて同期のパワーを見せつけてやりますよ!!」

「いいねぇ。さっきまで哀しそうな顔をしてた奴が、いまはやる気に満ちて楽しんでやろうって顔に変わったじゃないか。お前の感情の起伏は激しいね」

「あんたにだけは言われたくないわ!」

「なんだ? 何か言ったか?」

「いえ、がんばります!!」

「あれ、今度はなんで怒ってるんだ? 変な奴だな」

「だから、あんたにだけは言われたくないっつうの!!」


ひとりごと 

感情というものは、喜怒哀楽があって当然です。

これをまったく外に表さないことを目指すのではなく、適切に発揮できるように自分自身を修めることが肝要なのです。

それにしても、喜怒哀楽を四季に喩えた一斎先生のセンスには敬服せざるを得ません。


【原文】
喜気は猶お春のごとし、心の本領なり。怒気は猶お夏のごとし、心の変動なり。哀気は猶お秋のごとし、心の収斂なり。楽気は猶お冬のごとし、心の自信なり。自得は又喜気の春に復す。〔『言志耋録』第49条〕

【意訳】
喜びの感情は春のようなもので、心の本来の状態である。怒りの感情は夏のようなもので、心が大きく変動した状態である。哀しみの感情は秋のようなもので、心が引き締まった状態である。楽しみの感情は冬のようなもので、内に満足を得た状態であろう。この自得の姿が再び喜びの春へと復って行くのである

【一日一斎物語的解釈】
喜怒哀楽は感情の四季である。これらの感情とうまく付き合いながら自身を成長させていけばよい。


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