今日の神坂課長は、部下の梅田君を叱責しているようです。

「お前、今年に入ってから二回目だろ?」

「でも、前回は駐禁で今回はスピード違反です」

「違反は違反だろ!!」

「すいません」

「『すいません』じゃない、『すみません』だ」

「細かいっすね」

「お前、俺をナメてるのか?」

「そんなわけないじゃないですか。ちゃんと反省してます・・・」

「どう反省したんだよ、言ってみろ」

「スピードを出すときは、周囲にパトカーがいないか確認します」

「お前なぁ」

「あ、あと防犯レーダーも買います」

「ばかやろう!!」

居室が静まりかえったようです。

「いいか、今お前が言ったことは、朝寝坊をして遅刻した奴が、『次からは目覚まし時計を3つに増やします、と言っているのと同じだ。根本解決になってないんだよ」

「はい・・・」

「スピードを制限しているのは、そのドライバーとは無関係な人が巻き添えをくって亡くなるような痛ましい事故を無くすためだ」

「はい」

「お前、違反で捕まることを不運だと思ってないか?」

「あ、思ってます」

「そこが根本的な間違いだ。むしろ幸運なんだよ」

「え?」

「そりゃそうだろう。大事故になる前に、気づくことができたんだから」

「ああ、なるほど」

「お前、さっき『反省している』と言ったよな。本当の反省というのは、自分に矢印を向けて、自分の心の中にある本当の自分と向き合うことだ。お前は素直な良い奴だ。ただ、ちょっと他人にカッコよくみられたいという思いが強すぎる。それが、こういうことにつながるんだ。そんな周囲の眼なんか気にせずに、ありのままの自分と向き合え!」

「ありのままの自分・・・ですか?」

「そうだ。きっと、お前のご先祖様がお前に何かを気づかせようと一所懸命にアラートを出してくれてるんじゃないのか?」

「あ! きっと親父です。親父の弟は、小さい時に事故にあって亡くなったと言ってました」

「間違いないな。せっかく天国のお父さんがお前にメッセージを送ってるんだ。しっかりと受け取って、真の反省をするんだな」

「はい。明日は休みなので、父の墓参りに行ってきます!」


ひとりごと 

自省する以上、自分に矢印を向け、他人を意識から外し、ひたすら自分の中にある良心と会話する必要があるのだ、と一斎先生は言っているのでしょう。

安岡正篤先生は以下のように言います。

自省の「省」の字は、「かえりみる」という理解だけでは50点である。「はぶく」ことを忘れてはいけない。「かえりみてはぶく」ことができて100点である。

自省とは、

① 矢印を自分に向ける
② 自分の良心と会話をする
③ 以後「はぶく」べきものを明確にする

という3つが必要なのだと理解しておきましょう。


【原文】
端坐内省して心の工夫を做すには、宜しく先ず自ら其の主宰を認むべきなり。省する者は我れか、省せらるる者は我れか。心は固より我れにして、軀も亦我れなるに、此の言を為す者は果たして誰ぞや。是を之れ自省と謂う。自省の極は、乃ち霊光の真の我れたるを見る。〔『言志耋録』第50条〕

【訳文】
正坐内省して、心の修養をするには、先ず自ら自己の本体を認識しなければならない。内省する者が自己なのか、内省される者が自己なのか。心は本来自己であって、肉体もまた自己であるが、この言葉を発する主体は果して誰なのか。このようにすることを自省というのである。自省の窮極は、霊妙な心のはたらきこそが真の自己であると知ることである

【所感】
自省とは、矢印を自分に向け、周囲の視線や発言を遮断し、真の自分と向き合うことである。


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