今日の神坂課長は、大累課長とランチ中のようです。

「神坂さん、例の特別定額給付金は、神坂家では各自に配分されるんですか?」

「それな。怖くて聞けない」

「俺もカミさんに聞いてみたんですけどね。あれは消費還元するための給付金だから、10万円全額を渡してくれるそうです」

「マジで? お前がそういうことなら話がしやすくなった。今晩聞いてみよう」

「使いみちはどうします? やっぱりGO TO キャンペーンですか?」

「賛否両論のやつだな。今回の件で一番打撃を受けているのは、やはり観光業や飲食店だもんな」

「俺は行ってみたかった京都の高級旅館を予約しましたよ」

「誰と行くんだ?」

「なんですか、その質問? 家族に決まってるじゃないですか?!」

「ああ、そうか」

「山の中の秘境なんです。温泉も源泉かけ流しだし、料理も超一流らしいです。楽しみだなぁ」

「俺は、ちさとママに3ヶ月分の前払いとして、全額渡そうかな」

「なんか下心が見え隠れするなぁ」

「馬鹿野郎! 純粋に経営に苦しんでいる贔屓の店を助けたいっていう純粋な気持ちしかないわ!」

「佐藤部長に怒られますよ」

「あの二人の関係は、俺にも今一つ分からないんだよな。デキてる気もするし、そうじゃない気もする」

「で、願わくば横取りしようと?」

「まあな。バカ! 思わず誘導尋問に引っかかりそうになったわ」

「もう引っかかってましたよ」

「うるせぇ! とにかく俺はただ純粋にママに店を続けてもらいたいんだよ」

「そのうち、佐藤部長と一緒に店をやるようになったとしても?」

「も、もちろんだ! 俺には、お前のような我執や私欲はない。そういうものから脱却しない限り、人は自由に生きられないんだ!」

「自分に言い聞かせてますよね?」

「俺は宇宙の摂理に逆らわずに生きていくんだ!」

「もし、そのお礼にと、ママが高級旅館にお泊りしましょう、ってなっても断るんですね!」

「大累、もう許してくれ! 俺がママを好きなのは知ってるだろう。でも、これは儚い恋心。禁断の恋に発展することはないんだ!!」

「まだまだ、我執や私欲にまみれて生きてるみたいですね」

「そうみたい・・・」 


ひとりごと 

何度も言いますが、小生のような凡人は、無欲や無心にはなれません。

私欲に優る公欲を抱くしかないのです。

そして、公欲で私欲を抑制することが、そのまま心の修養になるのです。

さて、わが家の10万円の行方もまだ不明確なまま。

果たしてどうなるのか?

もしも満額もらえたら? なんて考えるともらえなかった時に空しくなるので、今はそれについては無でいようと思います。


【原文】
心無きに心有るは工夫是れなり。心有るに心無きは本体是なり。〔『言志耋録』第55条〕

【意訳】
心の本体は無であるから、自分の心を無へと近づけることが工夫である。自分の心から我執や私欲を取り除いた状態が、そのまま無声無臭の本体そのものなのだ

【一日一斎物語的解釈】
宇宙の摂理と一体となるためには、私欲や我執から心を開放することが必要である。


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