今日の神坂課長は、N鉄道病院名誉院長の長谷川先生のところに居るようです。

「長谷川先生、部下をマネジメントするのって難しいですねぇ」

「ははは、神坂君、どうしたの?」

「実は、ある若いメンバーに言われてしまったんですよ。求めてないのにアドバイスをしないで欲しいって」

「おお、ストレートにそんなことを言える若い人がいるなんてすばらしいじゃない!」

「先生・・・。まあ、たしかに自分の若かりし頃を思い出してみると、相談もしていないのに上司からアドバイスをされた時には、ウザイなと思いましたからね。(笑)」

「そこはすごく大事だよ。マネージャーは、アドバイスを求められる存在にならないとね」

「長谷川先生は、教授時代に下の先生からアドバイスを求められましたか?」

「最初の頃はまったく。神坂君と同じで、勝手にアドバイスをして煙たがられていたかな」

「えっ、長谷川先生がですか?」

「うん。そんな時に私の先輩の先生から『論語』の言葉を教えてもらったんだ。『その身正しければ、令せずして行われ、その身正しからざれば令すと雖も従わず』という言葉をね」

「どういう意味ですか?」

「自分の身が正しければ、命令などしなくても人は動くし、自分の身に不正があれば、命令をしたところで人は動かない、という意味だよ」

「ああ、そういうことですか!」

「私は、部下が相談したいと思える上司ではなかったんだ。それを知ってからは、こちらからアドバイスをすることはやめた。そして、東洋の古典を読み込んで、己の徳を積むことに勉めたんだ」

「すごいですね。そうしたら、アドバイスを求められるようになったんですか?」

「うん。私の専門は大腸領域の疾患でしょ。でも、次第に食道や胆膵、肝臓の専門のドクターからも相談を受けるようになった。そういう専門外の領域でも大きく的を外さないアドバイスができるようになったんだよ」

「徳がそうさせたのですか?」

「そう信じたいけど、どうだろうね?」

「きっとそうですよ。『徳は身を潤す』という言葉を聞いたことがあります。やっぱり学び続けるしかないんですねぇ。ところで、そうなるまでにはどのくらいの期間がかかったのですか?」

「3~4年くらいかな」

「そんなにかかるんですか!!」

「今からなら間に合うよ。神坂君のサラリーマン人生は、まだ20年近くあるんだからね!」


ひとりごと 

小生もマネージャーになりたての頃は、メンバーが求めてもいないのにアドバイスをして、上司面をしていました。

今となっては恥ずかしい限りです。

徳のある人の周りには自然に人が集まります。

徳を積めば、自然にアドバイスを求められるようになるでしょう。

あなたが相談されない上司なら、徳を積むしかありません!!


【原文】
霊光体に充つる時、細大の事物、遺落無く遅疑無し。〔『言志耋録』第67条〕

【意訳】
修養によって霊光が体に満ちると、天地間の小さい事も大なる事も漏らすことなく、また遅れたり疑う事もなくなっていく

【一日一斎物語的解釈】
己を修めることで徳が身を潤すようになると、すべての物事に配慮が行き届くようになり、迷いもなくなるものだ。


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