今日の神坂課長は、新美課長と喫茶コーナーで会話をしているようです。

「またCOVID-19が再燃して、メーカーさんの動きも制限され始めましたね」

「こっちの病院も、東京や大阪からの訪問を断るところが出て来たもんな」

「我々はまだ納品があるので、なんとかドクターにも会うことができますが、メーカーさんは厳しいでしょうね」

「このままじゃ、新規はほとんど取れないな」

「なので、各メーカーさんともオンライン営業を取り入れるべく検討しているらしいです」

「そうなるよな。zoomにしても、決して使い勝手は悪くないもんなぁ」

「我々にとっては脅威ですよね?」

「そうだな。いわゆる中抜きをされかねないからな。我々ディーラーを飛ばして、直接ドクターとメーカー担当者がやり取りするとなると、置いてきぼりになる」

「そうですよね。今、我々は何をすべきなのでしょうかね?」

「ポストコロナの世界は、コロナ前の世界とは別の世界になる。つまり、多くの変化が生まれるだろう。オンライン営業というのもそれに当る」

「はい」

「でも、変えちゃいけないものもある。それがお客様の課題を解決するというミッションだ」

「たしかにそうですね。営業のスタイルというのは、文明の利器が変われば大きく変わりますが、営業のミッションは決して変わりませんね」

「我々ディーラーは、メーカーさんのように潤沢な資金があるわけじゃないから、すぐにオンライン営業に手を出すのは難しい」

「はい」

「しかし逆にいえば、こういう状況になっても直接医師や看護師と会えるというのが、ディーラーの強みだ。お客様に直接会えるわずかな時間を無駄にせずに、しっかりと課題を見極めて、先手で解決策を提案していくべきだ」

「オンラインで、相手の真意をくみ取るというのは、なかなか難しいでしょうね。その点だけは、直接会う方が確実です」

「こういう大きな変化のときは、何を変えて、何を変えずに残すかを決めることが重要だと思う」

「そうですね。もう一度、我々ディーラーとメーカーとの彼我分析を行って、強みを再認識し、それをメンバーに展開する必要がありますね!」

「そういうことだ!」

「一旦、営業部全体の会議をやりませんか?」

「うん、すぐに部長に申し入れる。ただ」

「はい?」

「タケさんには、オンライン営業のツールについて、いろいろと調査することは始めてもらおう。大きな波に乗り遅れないためにもね!」


ひとりごと 

新型コロナウィルス感染症の流行という出来事が、生活スタイルや経済活動を大きく変えるきっかけとなることは間違いないでしょう。

日本では導入が進んでいなかったオンライン営業も、一気に加速するでしょう。

こうした状況下で、何を変え、何を残すかを考えることは非常に重要です。

変えるべきものを変えなければ、時代の波に飲み込まれてしまいます。

しかし、熟慮することなく、変えてはいけないものを変えてしまえば、企業存続の意味すら失いかねません。

各企業に難しい洗濯が迫られているのです。


【原文】
能く変ず、故に変無し。常に定まる、故に定無し。天地間、都(すべ)て是れ活道理なり。〔『言志耋録』第69条〕

【意訳】
常に変化しているものは、それ故に定まっているようである。常に不変のものは、それ故に変化しているようである。天地の間のことは、すべてこのように活きた道理なのだ

【一日一斎物語的解釈】
常に変わり続けるもの、常に変わらないもの、どちらにも宇宙の摂理が働いている。


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