今日のことば

【原文】
人心の霊は気を主とす。「気は体の充てるなり」。凡そ事を為すに気を以て先導と為さば、則ち挙体失措(しっそ)無し。技能・工芸も亦是(かく)の如し。〔『言志耋録』第77条〕

【意訳】
人の心の霊妙さは気を主体としている。『孟子』には「気は体の充てるなり」とある。およそ何か事を為すときには、志気を先導とすれば、体全体に過ちは生じないものである。技術や工芸なども同様である

【一日一斎物語的解釈】
何事も志を立てれば、それに気が連動して、万事うまくいく


今日のストーリー

今日の神坂課長は、担当の善久君に同行して、A医科大学の若手有望ドクターである戸田先生に面会中のようです。

「それにしても戸田先生、最近は各メーカーさんから引っ張りだこですね」

「ありがたいことです。新しいデバイスや手技を開発して、日本の医療のお役に立てるなら、こんな嬉しいことはないですからね」

「すばらしいですね。我々がディーラーという立場でどれだけご協力できるかわかりませんが、ぜひ先生の志を達成することをサポートさせてください」

「ありがとうございます。善久君は若いですが、一所懸命に仕事をしてくれるので助かっていますよ」

「ありがとうございます。善久、戸田先生に褒めてもらえるなんて最高じゃないか!」

「はい、戸田先生、ありがとうございます」

「それにしても、先生。あんまり寝てないんじゃないですか? 症例を毎日こなしながら、ペーパー(文献)も書いて、さらにこうしてデバイスの開発にも携わっていらっしゃる。睡眠時間はどれくらいですか?」

「毎日3時間くらいですかねぇ」

「それでは、身体もしんどくないですか?」

「神坂さん、さっきも言ったように、私は日本の医療に貢献したいんです。せっかく声をかけてくれるのに、断ることなんてできないですよ」

「熱い男ですね!」

「お見受けする限り、神坂さんもそんな方だと拝察しますけど?」

「あ、先生、おっしゃるとおりです。神坂課長ほど熱い人は弊社には居ません」

「ははは。やっぱりね! でもね、神坂さん。実は身体も全然しんどくないんですよ。やりたいことを全力でやれているからかな?」

「志ですね。日本の医療に貢献したいという先生の志が全身に漲っているから、身体も快調なんでしょうね」

幸い私はまだ30代前半ですので、気力も体力も充実しています。しばらくは突っ走りたいんですよ!」

「全力でサポートします。善久だけで手に負えないときは、私も喜んで駆けつけますから!」

「やっぱり、神坂さんも熱いねぇ!」

「はい。ただ、先生・・・」

「なんでしょう? 40歳をこえるとガクンと体力も気力も落ちます。今のうちにやりたいことは全部やってください!!」

「なるほど、経験者は語るですね。しかし、神坂さんもまだまだ眼は死んでないと思うけどな」

「そうですね、先生の話を聞いて、なんだか私も燃えてきました! お互いに頑張りましょう!!」


ひとりごと 

人間にとって、気力も体力もどちらも重要ですが、何かを成し遂げるには気力の充実が不可欠です。

体力だけでは何もできません。

気力を漲らせ、それをやりきる体力があって、初めて事は成就するのでしょう。

気力の源は志だ、と一斎先生は言います。

やはり、立志こそが成功の原動力なのですね。


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