今日のことば

【原文】
大にして世運の盛衰、小にして人事の栄辱、古往今来、皆旋転して移ること、猶お五星の行(めぐ)るに、順有り逆有り、以て太陽と相会するがごとし。天運・人事は数に同異無し。知らざる可からざるなり。〔『言志耋録』第82条〕

【意訳】
大にしては時勢の盛衰、小にしては人間の栄誉と恥辱、これらは今も昔もぐるぐると旋回しており、あたかも五星の運行が順行もあれば逆行もあり、結局は太陽と相会するようなものである。天運も人事も宇宙の摂理に異なることはない。このことはよく理解しておくべきことだ

【一日一斎物語的解釈】
特に人との関係において発生する事象というものは、自分の力だけではどうにもならないこともある。人事を尽して天命を待つしかないのだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、高校時代の同級生とZoom飲み会をしているようです。

「高井、そんなに落ち込むなよ」

「神坂、これが落ち込まずに入れるかよ。お前はいいよな、課長になれたんだから」

「俺の会社はお前の会社から見たら、吹けば飛ぶような会社だぞ。社員の数も全然違うし、比較の対象になるかよ」

「今度こそ、課長になれると思ってたんだ・・・。それがまさか、後輩が先に課長になるなんてよ。これでもう俺の課長の芽はなくなったよ」

「そんなことはないだろう」

「同じ課のメンバーが課長になったんだ。もう終わりだよ」

「正式に決まるのは4月じゃないのか?」

「ウチは9末が本決算だからな。昇格は10月1日に決まり、給与は翌年の4月1日から新しい役職として支払われる仕組みなんだよ」

「なるほど」

「俺があいつに負けているとは思えない。完全に好き嫌い人事だよ」

「そんなに課長になりたいものなのか? 俺はどっちでもよかったけどなぁ」

「ここで課長になれないということは、今後定年までずっと今のままだぞ。企業人として死を宣告されたようなものだよ」

「それは大袈裟だろう。なあ、高井。人事なんてものは、自分の力ではどうしようもないものじゃないか。そんなことに一喜一憂するのは、もったいないと思わないか?」

「出世しなければ、大きな仕事を自分の思い通りにできないんだ!」

「それはどうかな? 出世したって、仕事は思い通りにはならないよ。人事も仕事も、そんな生易しいものじゃない。やることを徹底的にやってプロセスに満足するべきだよ。結果がすべてではないはずだ!」

「それはきれいごとじゃないのか?」

「そうかも知れない。でも、俺はそう思うし、今後もそういうスタンスで生きていくよ。一度しかない人生だからな。不平不満で生きるより、楽天的に生きる道を選びたいんだ」

「神坂、お前はやっぱり大物だな。そんな考え方は俺にはできないよ。でも、お前に言いたいことを言ったら少しだけ気が紛れたよ」

「ははは。少しだけか?」

「ああ、少しだけな。(笑)」


ひとりごと 

人事を尽して天命を待つ、という言葉はいまも廃れずに残っています。

それは、逆の見方をすれば、そのことがどれだけ難しいかを物語っているとも言えるのではないでしょうか?

儒学の根底には、健康的なオプティズムが流れていると言われます。

努力は必ず報われると信じて、力を尽くす。

しかし、結果が思わぬ方向に出てしまったときには、努力したプロセスは無意味でなく次に活かせると信じて、また歩き出しましょう!!


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