今日のことば

【原文】
寒暑・栄枯は天地の呼吸なり。苦楽・栄辱は人生の呼吸なり。即ち世界の活動たる所以なり。〔『言志耋録』第87条〕

【訳文】
寒暑や栄枯盛衰は天地の呼吸のようなものである。苦楽や栄誉恥辱は人生の呼吸のようなものである。それはすなわち世界が活動している証拠といえるのだ

【一日一斎物語的解釈】
どんな楽しい出来事も、どんな辛い出来事も、長い人生の一呼吸に過ぎない。それらすべてが生きている証なのだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、YouTube動画で「孔田丘一の儒学講座』を観ているようです。

「このクソ暑い中でも、まだお迎えが来ないから、今日も暇つぶしに動画を配信します。これを観ているアンタも相当ヒマなんだろうねぇ」

「やかましいわ、COVID-19で外に出れねぇんだから、仕方ないだろ!」

「どうせコロナで外出できないとかなんとか言って、コロナを怨んでるんじゃろうな。しかし、これもまた天地の呼吸に過ぎんのじゃよ、諸君! まあ、この場合は天が病に罹ったという感じかな。ガッハハハ」

「なにが面白いんだよ!」

「このクソ暑いのも、冬に寒くなるのも、また物事が栄枯盛衰を繰り返すのも、すべては天地の呼吸なんじゃ。そして、人間にも苦しい時期もあれば、絶好調の時もある。これもまた人生の呼吸のようなものなんだ」

「なるほど」

「いいか、諸君。世界が動いているから栄枯盛衰がある。人は活動するからこそ、栄誉恥辱があるんじゃ。だからって立ち止まってはいかん。前に進みなさい。後ろに下がったところで、何も解決はしないんだから」

「今、すごくつらい時期にある若者もおるじゃろう。しかし、自分の命を粗末にしてはいかんよ。アンタの体のすべては、貴いご両親からの贈り物であり、いわば父母の遺体ともいえるものだ。大切にお預かりして、寿命とともにお返しするのが真っ当な生き方なんだ」

「相変わらず口は悪いけど、良いことを言うんだよな」

「生きて居れば、また必ず良いこともある。もちろん、また辛いことにもめぐり会うじゃろう。それはすべてがアンタの人生の一呼吸なんじゃよ。そして、人間は呼吸をしなければ生きていけないように、辛い経験もなければ、人生に深みが出んのだ。味わい深い人生を生きたいのなら、苦労に立ち向かい、逆境に飲み込まれなさい。そして、また這い上がりなさい!」

「この爺さん、今日はやけにアツいな」

「少し前に、有名な俳優さんが自殺したじゃろ。わしはああいうことが残念でならないんだよ。とても辛い経験をしたのだろうとは思うよ。でもね、それは長い人生においては、たった一呼吸の出来事なんだよ」

「俺もそう思う」

「諸君、逆境を楽しもう。その先にはまた楽しいことも待っているんだからな。さて、そろそろ終わるとするかな。これ以上話していると、わしが辛くなってくる。諸君、自分の体を傷つけてはいけないよ!」

「・・・。なんだか、今日はドンと来たな。そうか、今日はお盆の時期だもんな。あの爺さんの親族にも戦争で命を落とした人がいるのかもな。よし、明日からまた仕事だ。逆境を楽しんでやろうじゃないか!!」


ひとりごと 

この「苦楽・栄辱は人生の呼吸なり」という言葉は、『言志四録』全1133章の中でも、名言の部類に入る言葉ではないでしょうか。

どんな楽しいことも、どんな辛いことも、長い人生の中の一呼吸に過ぎない。それこそ、生きている証なんだよ。

だから、そんなことに一喜一憂せずに、前を向いて進みなさい。生きていることに価値があるのだから。

そんな風に一斎先生が語っているように感じます。


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