今日のことば

【原文】
敬は須らく活敬を要すべし。騎馬馳突(ちとつ)も亦敬なり。彎弓貫革(わんきゅうかんかく)も亦敬なり。必ずしも跼蹐畏縮(きょくせきいしゅく)の態を做さず。〔『言志耋録』第89条〕

【意訳】
敬は活き活きした行動的の中で発揮することが必要である。騎馬で疾走し突進するときにも敬を発揮し、弓を引き絞り敵の甲冑を射抜くときにも敬を発揮する。必ずしも、天を畏れて背をかがめ、恐れて萎縮するばかりが敬ではない

【一日一斎物語的解釈】
敬するとは、ペコペコ頭を下げることではない。堂々とした態度の中に相手への経緯と慎みの念を抱くことが大切である。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業2課の石崎君とクレーム処理に訪れたようです。

「石崎、お前、ちょっとペコペコし過ぎだぞ」

「でも、中身が空っぽの状態で納品してしまったんですよ。恐縮するに決まってるじゃないですか!」

「もちろん、ご迷惑をかけたという点では、お詫びする気持ちは必要だ。しかし、もう少し毅然とした態度で接して欲しいな」

「常にお客様に敬意をもって接しろ、って課長はよく言っているじゃないですか!」

「本当に人を敬うということは、相手も立て、自分も立たないとダメだ。お前のさっきの態度は、いわゆる慇懃無礼ってやつだよ」

「納得できないですよ! しっかり謝ったのに、私のどこがいけないんですか!」

「お詫びは、一度深々と頭を下げればいいんだ。お前みたいに何度も何度もペコペコするのは、みっともないだけだ」

「酷いですよ、『みっともない』なんて、そこまで言わなくても・・・」

「大事なことは、しっかりとお詫びした後に、具体的にどう行動するかだ。謝って終り、という問題ではないだろう」

「それはそうですけど、ちゃんと謝らないと話が先に進みませんよね?」

「だから、一度しっかりと頭を下げて、お詫びの言葉を言えばいいんだ。後は、再発防止をどう徹底するかだ。メーカーさんは出荷時の検査の個数を増やすと言っている。そして我々も、事前確認をしっかりやる。目視にプラスして、ちょっと持ち上げてみる程度しかできないけどな」

「それと交換品をすぐに手配することですね?」

「そのとおり。一番の問題は、検査を止めてしまうことだ。もしかしたら、患者様に帰宅してもらわなければいけないかも知れない。今回は予備があったから、事なきを得たけどな」

「はい」

「謝罪は必要だ。でも、一番お客様が望んでいることは、早く正常な商品をお届けすることと、再発防止策を徹底することだからな」

「まだ、なんとなく腹に落ちませんけどね」

「たとえばお前は、深々とお辞儀をされて謝罪されるのと、頭をペコペコ何度も下げて謝罪されるのとでは、どちらに誠意を感じる?」

「まあ、それは深々とお辞儀をする方でしょうね」

「それは何故だと思う?」

「さあ? なぜでしょう?」

「敬意を感じるからだよ。ペコペコしていると、その場をなんとかやり過ごそうという意識を感じてしまうから、敬意を感じることはできないんだよ」

「なるほど。もっと威厳があった方が、かえって敬意を感じるんですね? 意識してみます!」


ひとりごと 

最近は見なくなりましたが、かっては、電話機に向かってペコペコと頭を下げながら電話をしているサラリーマンがいましたね。

当時は、子供心に、みっともないな、と思ったことを思い出します。

活きた「敬」を発揮しなければ、誠意は伝わらないでしょう。

皆様もお気をつけください。


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