今日のことば

【原文】
牧竪(ぼくじゅ)も腰を折れば頷かざるを得ず。乳童も手を拱(こまね)けば亦戯る可からず。君子、恭敬を以て甲冑を為し、遜譲を以て干櫓(かんろ)と為さば、誰か敢て非礼を以て之に加えんや。故に曰く、「人自ら侮って而る後に人之を侮る」と。〔『言志耋録』第93条〕

【意訳】
牧場で働く子供でも、腰を屈めて敬礼したなら、うなずいて挨拶しない訳にはいかない。乳飲み子でも手を拱いて敬意を表したなら、ふざけた対応をとる訳にはいかない。まして、立派な人が、恭しく敬することで自分を守る鎧兜とし、謙譲の気持ちを示すことで楯とするならば、誰が敢えて非礼な行為を仕掛けるだろうか。古人も「人は自ら侮ることで後々人から侮られる」と云っているではないか

【一日一斎物語的解釈】
人から敬われたいと願うなら、まず自らが遜り、相手に敬意を示すべきである。逆に相手を馬鹿にすれば、自分も必ず馬鹿にされることになるものだ。


今日のストーリー

石崎君がなにやら腹を立てながら帰社したようです。

「どうした少年、スピード違反で捕まったのか?」

「違いますよ! K医科の安斎って奴が凄く生意気な口の利き方をするから腹が立っているんです」

「知らない奴だな」

「まだ2年目の若造ですよ」

「お前も若造だけどな。(笑)」

「私はもう4年目ですからね。ため口を聞かれる筋合いはないですよ!!」

「それで、お前はどういう対応をしたんだよ?」

「『石崎さん、売れてる?』って聞いてきたから、『まあな』って答えておきました」

「そこで、大人の対応をしてみろよ。『こういう時期ですけど、しっかりお客様の心をつかんでいるから、それほど売り上げは落ちていませんね。安斎さんはどうですか?』なんて聞いてみたら?」

「それ、面白いですね!」

「他人から尊敬されたいと思うなら、まず自分がその人を尊敬しないとな」

「あ、そうでしたね。この前、そんな話をしましたね」

「そうだよ。逆に、相手を馬鹿にする態度を取ったら、めぐりめぐって自分も同じような態度をされるものだ」

「と、一斎先生が言ってたんですか?」

「あ、バレた? これじゃ、俺もいつまで経っても尊敬はされないな。(笑)」

「尊敬してますよ、課長のことは」

「え?」

「課長は、口は悪いけど、私たちメンバーにいつも本気でぶつかってきてくれますから。それって、我々に対して敬意をもって接してくれている証拠だと思うんです」

「石崎・・・」

「あれ? 俺、どうしちゃったんだろう? 今のは、忘れてください。じゃあ、帰ります!」

「おい、待てよ。でも、今のは本心なんだよな?」

石崎君がこちらを振り返ってニコリと笑いかけました。


ひとりごと 

こちら側の気持ちというものは、隠しているつもりでも相手に伝わるものです。

それも長く一緒に仕事をしている同僚やお客様であれば、なおさらでしょう。

相手の態度は、自分の態度の鏡なのだと考えるべきなのです。


bakanisuru