今日のことば

【原文】
敬稍弛めば則ち経営心起る。経営心起れば則ち名利心之に従う。敬は弛む可からざるなり。〔『言志耋録』第94条〕

【意訳】
敬い慎む心が緩んでくると、企みの心が起きてくる。企みの心が起こってくると、名利に走ろうとする心がこれに従う。敬の心を緩めてはいけない

【一日一斎物語的解釈】
私欲や我欲に走るのは、敬する心を失った時だ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、佐藤部長とランチに出かけたようです。

「結局、私欲とか我欲が出てくるというのは、他人に対して敬う気持ちが薄れている証拠なんでしょうね?」

「人だけじゃないよ」

「あー、自然やそこに生きる動植物に対しても同じですね」

「うん、そのとおりじゃないかな。人間は人間だけでこの地球を動かしていると思ってしまいがちだけど、それは大きな間違いだよね。たとえば、植物が光合成によって、二酸化炭素を吸い込んで酸素に変えてくれているおかげで、動物は生きていけるわけだからね」

「たしかにそうですね。それに動物の命をいただいて生きているわけですしね」

「食事の前に『いただきます』というのは、そうした他の生物や大自然に対しての敬意を示していることになるんだよ」

「なるほど。そうなると、言葉だけでなく、手を合わせることも必要ですね。そういえば、部長はいつもそうしていますね」

「うん、もう習慣になっているから」

「私も真似させて頂きます」

「ぜひ、ご家族や課のメンバーにもそういう話をしてあげて欲しいな」

「はい、そうします。やっぱり、人間は謙虚でなければいけませんねぇ。そう思うと、昔の私は酷かったですね?」

「たしかに酷かった!」

「ははは。普段なら『そんなことないよ』と言ってくれる部長がそう言うんだから、相当酷かったんでしょうね?」

「それは酷いもんだった。でもね、当時の神坂君は謙虚さは足りなかったけど、私欲とか我欲を感じることはなかった気がするよ」

「あー、そう言われてみればそうです。ただ、無駄に正義感が強かったのと、上司や先輩を尊敬する気持ちが微塵もなかっただけです」

「『だけ』って、それが私の悩みの種だったんだよ」

「あ、失礼しました。あー、あの時代に戻ってやり直したい」

「まだまだ、これから先の人生でやり直せるよ!」


ひとりごと

人は謙虚さを失うと利己的になります。

大自然の中で生かされていることを忘れず、日々の食事の前に、そのことに感謝をする意味でも「いただきます」という挨拶はとても重要です。

無くしてはいけない慣習ですね。


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