今日のことば

【原文】
凡そ道理を思惟して其の恰好を得る者、往往宵分(しょうぶん)に在り。神気澄静せるを以てなり。静坐の時、最も宜しく精神を収斂し、鎮めて肚腔(とこう)に在るべし。即ち事を処するの本と為る。認めて参禅の様子と做すこと勿れ。〔『言志耋録』第101条〕

物の道理を思索していて、正しいありようを得るのは概ね夜半頃である。その時分は、精神が静まり澄みきっているからであろう。静坐をするのも、この時分に最もよく精神を引き締めて、自分の胸や胆(はら)に鎮めるのがよい。これが物事を処理する上での根本である。しかし、これを参禅の様子だと見做してはならない

一日一斎物語的解釈
ひとり瞑想するのであれば、深夜の時間帯が最も適している。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、佐藤部長と「季節の料理 ちさと」にやってきたようです。

「ママ、ごめんね。なかなか来れなくて。お店はどう?」

「O村知事が緊急事態宣言を出した時は、もうダメかなと思ったけど、諦めが悪い性質だからね。もうすこし頑張ってみるわ」

「本当に頑張ってよ。こうやってたまに店に来ることしかできないけど。でも、だいぶお客さんが戻ってきたんじゃない?」

「そうね。ソーシャルディスタンスを意識した座席配置にしているから、満席になっても良い時の7割くらいだけどね」

「部長とも話をしていてね。あんまり怖がり過ぎずに、平常の生活に戻していくことにしたんだ。ね、部長」

「うん、先が見えない中で、ネガティブにばかり考えていたら心が病んでしまうからね」

二人は生ビールと枝豆を注文したようです。

「そういえば、部長。私は最近、いろいろと深く考えることが重なりましてね。一昨日は深夜に部屋でひとりで瞑想しましたし、昨日は昼間に会議室で熟考してみたんです」

「どちらが良かった?」

「深夜です。やっぱり物音が聞こえないし、静かだからですかね?」

「一斎先生も深夜の瞑想を薦めているよね。ただ静かというだけが理由ではないんじゃないかな? なんというのか、眼に見えない気みたいなものが集まってくるのが深夜0時から2時くらいまでのような気がするんだよね」

「わかる気がします。昼間は目を瞑らないと深く考えられなかったのですが、深夜は目を開けていても、一瞬で深く考えることができました」

「不思議だよね。何か見えない力が作用しているんだろうな」

「そうなんでしょうね」

「面白いもので、その時は解決策が見つからなくても、そのまま寝て、翌朝目を覚ますと、突然良いアイデアが降りてくることもあるものだよ」

「ああ、それも経験があります。やっぱり脳は考え続けていてくれるんですね」

「脳は眠らないからね。ずっと寝ている間も考え続けてくれるんだろう」

そこにちさとママが生ビールとおつまみを運んできました。

「私もね、深夜に瞑想して、ふとアイデアが浮かんだの。私のレシピをブログに載せてみようって」

「へぇー、どうだった?」

「それがビックリ! 詳しく作り方を聞きたいという人がたくさんコメントをくれたの。それで、先週の土曜日のお昼にオンラインでお料理教室をやってみたの」

「おー、面白そう」

「うん、材料は各自が準備する形だから、ひとり3,000円に価格設定してみたら、30人近くも集まってくれたわ」

「安くない? 5,000円とか10,000円くらい取れないの?」

「いいの。隔週開催にするつもりだから、月に二回で20万円近くは入るのよ。お店の家賃の足しにはなるから」

「そっか、でも良かったね。やっぱり、深夜の瞑想は効果が大きいな。今日も深酒せずに、帰ったらあれこれ考えてみるかな」


ひとりごと

かつて、詩人の坂村真民さんは、深夜0時に起床して近くに流れる重信川のほとりに行き、そこにある石に耳を当てて、大自然の力を吸収し、師を書いていたそうです。

深夜には不思議なパワーが溢れているように感じます。

深く考えたい事象があるときは、真夜中にろうそくの灯りひとつで、じっくりと考えてみるのも良いかもしれません。


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