今日のことば

【原文】
筆無くして画(えが)く者は形影なり。脚無くして走る者は感応なり。〔『言志耋録』第121条〕

【意訳】
筆がなくても描き出せるものは影である。足がなくても走るものは感応である

【一日一斎物語的解釈】
筆などなくても形あるものには必ず影が描かれるように、人と人の間に感が起れば、感には足などないけれども、即座に相手に反応を起させるものだ


今日のストーリー

営業2課の山田さんが珍しく落ち込んでいるようです。

「あれ、山田さん。どうしたの? なんか元気がない気がするよ」

「あー、隠しているつもりでもダメですね。実は、カミさんと喧嘩をしてしまいまして・・・」

「あらあら、珍しいね。山田さんのところは夫婦仲が良いと評判なのに」

「ちょっと疲れが溜まっていたのですかね? つい、余計なことを言ってしまいました」

「聞いてもいい?」

「はい。誰かに話して気分転換をしたいと思っていたので、聞いてもらえますか?」

「俺みたいな下衆な奴でよろしいならば。(笑)」

「休みの日に朝早くから、妻に買い物に連れて行ってくれと頼まれましてね。アウトレットに行きたいから、早く出たいと」

「あるある」

「そこでまず、『それなら前の日のうちに言ってくれよ』って言ってしまいまして」

「そりゃ、言うでしょ」

「そうしたら、前の日に言ったと言うんです。晩御飯のときに。私は全然聞いていなかったようで・・・」

「わが家の日常茶飯事だ。(笑)」

「そこでちょっと険悪な雰囲気になりまして、それでも早く連れていけと言われて」

「さらに追い打ちを?」

「はい。『お前は働いていないから良いよな。俺は疲れているんだ』と」

「あー、一番ダメなやつだよ、それ!」

「はい。そうしたら、料理・選択・掃除・子育て、これは仕事じゃないと言うのか、とキレられまして」

「100%そうなるだろうなぁ」

「シマッタと思ったときにはもう遅かったです。(笑)」

「言葉というのは、口を出てしまったら、足なんかないくせに一瞬にして相手の心に届いてしまう。そうなると釘と同じで、仮に釘を抜いたところで、釘穴は残ってしまう。つまり、しこりが消えないわけだ」

「まさにその通りでした」

「で、買い物は行ったの?」

「いえ、妻は怒ってそのまま出かけていきました」

「まさか、そのまま家出?」

「いえいえ、夜には帰ってきましたよ。ちゃんと家族の分の晩御飯を買って」

「偉いなぁ、奥さん」

「でも、私とはまだ口をきいてくれません・・・」

「そうかぁ、仲が良い夫婦というのは、そういうことが辛いんだろうね?」

「え、課長はそういう時は辛くないんですか?」

「うん、これ幸いと飲みに出かけられるし、つまらない愚痴とか弱音を聞かなくて済むから、かえって心は晴れやかだったりするよ」

「それで良いんですか?」


ひとりごと

今日の『言志』の章句は難解なので、正しく理解できているか不安ですが、感情は足もなく瞬時に相手に伝わるという理解をして、ストーリーを組み立てました

言葉は口から出る前にしか、コントロールできません。

口から外に出てしまったが最後、もう自分でも制御不能になるわけです。

感情や言葉には足がないのにも関わらず・・・。

特に夫婦というのは、一番身近な他人ですから、慎重なうえに慎重に行かねばなりませんが、これがなかなか・・・。


kenka_fuufu