今日のことば

【原文】
口舌を以て諭す者は、人従うことを肯ぜず。躬行を以て率いる者は、人効(なら)いて之に従う。道徳を以て化する者は、則ち人、自然に服従して痕迹を見ず。〔『言志耋録』第125条〕

【意訳】
口先だけで人を諭そうとする人には、誰も従おうとはしない。実践をもって人を率いる人には、人はそれを見習い従うものである。ましてや、道徳をもって人を感化する人には、人は心から自然に従うものだ

【一日一斎物語的解釈】
他人を徳で動かす人を目指せ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、大累課長とランチ中のようです。

「最近は雑賀とうまくやってるか?」

「あいつとうまくやるというのは、どのレベルを指すんですかね? 心と心で分かり合えるレベルだというなら一生かかっても無理です。いや、もう一回生まれ変わっても無理かな?」

「ははは。相変わらず苦労しているんだな」

「修行だと思ってますから」

「いや、実際に修行なんじゃないか? 言葉でいくら諭しても変わらないのは、言葉の中身がどうこうではなく、お互いの信頼関係ができていない証拠だろうからな」

「それはそうでしょうね」

「もっと言えば、背中を見せればついて来るなんて思うのも驕りだよな。そこにも信頼関係が必要だ」

「おっしゃるとおり!」

「結局は、リーダーが徳を積むしかないんだよ。徳があれば、命令しなくても人は従う、と孔子も言っているからな」

「憧れますけど、理想に過ぎないってところかなぁ」

「今の俺たちにはな。でも、理想というのは目指せば良いんだ。なれなくたって、目指せば少しは近づけるはずだからさ」

「目指さなければ何も変わりませんからね。実際、こいつに育てられていると思うと、雑賀が可愛くみえてくることもあります」

「いいねぇ! 俺も石崎、善久、梅田なんて可愛さしか感じないよ」

「結構、石崎にはイジられてますよね?」

「それも可愛いもんだよ。俺の若い頃の方が、もっと性質(たち)が悪かったよな?」

「まったくです!」

「そこは否定しろよ! でも、そのとおりだよな。それに俺は、面倒くさい後輩のお陰で、少しはまともなリーダーになりつつあるからな」

「それはもしかして・・・」

「そう、俺の横でラーメン食ってる奴」

「まったくもっておっしゃるとおりです。その節はご迷惑をおかけしました!」

「なんだよ、気持ち悪いな。今日のお前は、やけに素直だな。なにか裏があるだろ?」

「さすがは偉大なる先輩、神坂さんだ。実は今日、家に財布を忘れてきまして・・・」

「ちっ、最初から俺に奢らせるつもりだったんだな」

「おっしゃるとおりです。それで、ご迷惑になってはいけないなとラーメンを希望した次第で・・・」

「あー、これも修行だ。修行、修行、修行・・・」

「なんだか、神坂さんが徳のある高僧に見えてきました」

「てめぇ、ラーメン一杯奢らせるために、よくそこまで卑屈になれるな!!」


ひとりごと

人を感化するには、言葉よりも実践で示すべきです。

しかし、実践で示すことよりも上があるのだと、一斎先生は言います。

それが徳です。

個性の強い孔子の弟子たちも、徳の高い顔回がそばにいるときは、皆素直に彼の言葉に耳を傾けています。

徳を積むことを続けるしかありませんね。


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