今日のことば

【原文】
利を人に譲り、害を己に受くる者は、是れ譲なり。美を人に推し、醜を己に取るは、是れ謙なり。謙の反を驕と為し、譲の反を争と為す。驕・争は是れ身を亡ぼすの始めなり。戒めざる可けんや。〔『言志耋録』第127条〕

【意訳】
利益を他人に譲り、自分は損失を引き受けるというのが「譲」である。良いことはまず他人を推薦し、悪いことは自分が真っ先に対応するというのは「謙」である。「謙」の反対が「驕」であり、「譲」の反対が「争」である。この驕と争は自分の身を亡ぼす始めである。十分に戒めるべきである

【所感】
謙譲は身を保つ最大の術であり、驕争は身を滅ぼす最悪の術である

今日のストーリー

神坂課長の妻の菜穂さんが、かなり落ち込んだ表情で帰宅しました。

「どうしたの? えらくがっかりしてない?」

「だって、楽しみにしていた限定販売のケーキがあたしの目の前で売り切れたのよ! あと1分早く着いていたらゲットできたのに!!」

「なんだ、そんなことか」

「なに言ってるの、重大なことよ。ずっと楽しみにしていたのに!!」

「だったら、もっと早く家を出ればよかったじゃないか」

「あんたらの朝ごはんを作ってから、お化粧をして出掛けるとなると、あのくらいの時間になるでしょ!!」

「おいおい、俺にキレるのはやめてくれない」

「あー、今日から何を楽しみに生きていこう」

「大袈裟だなぁ。でも、お前が譲ったことで、そのケーキを手に入れて幸せを味わっている人がいる。善いことをしたと思えばいいさ」

「なにを仙人みたいなこと言ってるのよ。奪い合ってでもゲットしたかったのに!」

「奪い合いや人に驕る行為は、人間破滅の第一歩だと佐藤一斎先生も言っているぞ。人に譲り、嫌なことを自分が進んで引き受ける人生こそが素晴らしいんだよ」

「勇にそんなこと言われるとはね!」

「俺も少しは変わってきたかもよ。この前も、何台もの車に先を譲ったからな」

「うそでしょ? 意地でも自分の前には車を入れなかった人が?」

「そう。意地悪をして道を譲らずに自分が前に出たからって、大して得することもない。逆に前を譲るとすごく気持ちがいいことに気づいた」

「へぇー」

「やっぱり争い合って生きるより、譲り合う方がお互いに幸せだよな」

「なんか、そんなこと言われたら出掛けにくくなったな」

「なんで?」

「明日もデパートのバーゲンに行くつもりだったの。勇が言う醜い奪い合いのステージにね!」

「あー、おばちゃん同士が、まるでウンコにたかる蠅のように、ワゴンに群がるシーンは、この世で最も醜い争いの場だな」

「汚い喩えねぇ。それに悪かったわね、おばちゃんで! そんなこと言われたら行きにくくなるじゃない!」

「でも、行くんだろ?」

「当然です!!」

「明日は醜い争いに勝利して、最高の笑顔で帰ってくることを祈ってるよ!」


ひとりごと

謙譲の心というのは、人間生活の潤滑剤のようなものです。

逆に人に驕ることや、人と奪い合う心というのは、人間生活を不毛なものにする軋轢となります。

謙譲を実行する際の最大のポイントは、見返りを求めないことです。

譲り、謙ることで自分が幸福感を味わえたならそれで良しとする。

ここがポイントでしょう!


sale_ubaiai