今日のことば

【原文】
(よ)は是れ終を始に要(もと)め、謙は是れ始を終に全うす。世を渉るの道、謙と豫とに若(し)くは無し。〔『言志耋録』第129条〕

【意訳】
前もって準備するとは、始めの段階で終わりをしっかりと予測することであり、謙虚さを忘れなければ、予測したとおりに有終の美を飾ることができる。世を渡る道とは結局、この謙と予の二つにまさるものはないのだ。

【一日一斎物語的解釈】
準備と謙虚さ、この2つこそが人生を渡る大切な切符となる。

今日のストーリー

今日の神坂課長は、勉強会で知り合った元経営者の松本さんと食事をしているようです。

「フミさんは、リーマンショックを乗り越えて会社を立て直したんですよね?」

「もう、ロング・タイム・アゴーだけどね」

「会社を経営する上で、フミさんが大切にしてきたことって何ですか?」

「僕はそんなことを偉そうに話せるような人間じゃないよ」

「でも実際に会社を立て直して大きくしたんですよね。私は経営者ではないですけど、成功した人の話を聴いて、少しでも参考にできたら嬉しいんですけど」

「成功者だなんて、とんでもない! ただ目の前の事に一所懸命に取り組んできただけだよ」

「フミさんが大切にしてきたことを是非教えてください!」

「参ったなぁ。ゴッドが期待しているようなことは何も話せないよ」

「いえ、フミさんは凄い人です」

「あえて言うならば、準備を怠らないことと謙虚さを忘れないことかなぁ」

「準備と謙虚さですか?」

「うん。何事も準備は必要だよね。特に会社の経営というのは、何が起こるかわからない。今回のコロナのことだって、今年の初めにそれを予想したアナリストなんて一人もいなかったんじゃないかな?」

「それはそうでしょうね」

「だからこそ、準備が必要だと思うんだ。特にワースト・シナリオを準備しておくことはベリー・インポータントだよ」

「最悪の事態を予測しておくんですか?」

「イエス。出来る限りね。そのうえで、その危機をどう切り抜けていくかをある程度想定しておく必要があると思う」

「なるほど。私はベスト・シナリオしか描いていないかも?」

「ゴッドらしいけど、それじゃ最悪の事態になったときに慌ててしまうでしょ?」

「はい。そうですね」

「あとは、すべての関係者に感謝をすることかな。お客様は当然として、パーツ製造の下請けさんや、販売店の営業マン、それに忘れてはいけないのが、自分の会社の社員さんだよね」

「感謝の気持ちがあるから、謙虚になれるのですね?」
「そのとおり!」

「たしかにフミさんは、すごく謙虚ですもんね」

「昔は違ったんだよ。ゴッド以上に部下を怒鳴り散らすようなパワハラ上司だった」

「リーマンショックを機に変わったんですよね?」

「オー・イエス! 今となっては、有難い経験だったと思えるよ

「いろいろな経験をされて、謙虚さが完全に身についたんですね。背中を追いかけます!」

「大丈夫! ゴッドなら、きっと僕をはるか後方に抜き去っていくよ」

「いや、そこは謙虚さと敬老の気持ちをもって、抜かずに少し後ろを追いかけますよ。(笑)」


ひとりごと

準備をして計画どおりに謙虚さをもって実行する。

これが仕事を成功させる秘訣だと、一斎先生は言います。

考え得る限りの展開を想像し、それに対処する方法をあらかじめ決めておけば、最悪の事態は免れるはずです。

そして、仕事が軌道に乗った後も謙虚さを忘れないことです。

調子に乗って傲れば、人の心が離れ、結果も芳しいものにはならないでしょう。

準備と謙虚さを大切に日々を過ごしていきましょう!


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