今日のことば
【原文】
今日の貧賤に素行する能わずんば、乃ち他日の富貴に必ず驕泰(きょうたい)せん。今日の富貴に素行する能わずんば、乃ち他日の患難に必ず狼狽せん。〔『言志耋録』第141条〕
【意訳】
今現在の貧賤な環境を安んじて受け容れることができなければ、他日富貴な環境となった際に必ず驕り高ぶることになる。また、今現在の富貴な環境に安んじて驕らないようにしていなければ、他日貧賤な環境となった際には必ず狼狽することになるだろう。
【一日一斎物語的解釈】
今、不遇ならば、その環境を受け容れなさい。さもないと、運気が好転したときに傲り高ぶることになるだろう。また、今が順境にあるなら、調子に乗ってはいけない。さもないと、運気が暗転したときに慌てふためくことになるだろう。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、佐藤部長と同行中のようです。
「雨が降ると、途端に道が混みますよね。どこも渋滞だらけです」
「事故も起きるしね」
「私は渋滞が何より嫌いでして、300km運転するより、5kmの渋滞の方が疲れます」
「ははは、神坂君らしいね。しかし、渋滞に遭遇したら、無理に抜け道を探そうとするより、仕方ないとあきらめた方がいいよ」
「それができれば苦労しないですよ。だめです! この道も渋滞です」
「でしょう。こういうときはジタバタしてもダメだよ。一斎先生も、運の悪い時には無理にそこから抜け出そうとせずに、その境遇を安らかに受け入れなさい、と言っている。そういう心の鍛錬をしておかないと、運気が好転したときに調子に乗って失敗することになると警鐘を鳴らしているんだ」
「そういうものですかねぇ?」
「逆のことも言っていてね。今が好調なら調子に乗ってはいけない。さもないと、今度は不調になったときに慌ててしまうとね」
「私のような単純な人間は、特にそういう傾向が強いかも知れません」
「神坂君にとっては、渋滞に巻き込まれることが、最高の心の鍛錬かも知れないよ」
「渋滞で心を鍛えるくらいなら、理不尽なドクターのクレームを聴いている方がまだマシです!」
「私は、そっちの方が辛いなぁ。(笑)」
「そっちは、何を馬鹿なことを言ってるんだと心の中で思いながら、それを顔に出さずに対処するという鍛錬になりますからね」
「何の鍛錬?」
「心の中を見透かされない鍛錬です」
「ははは」
「お、渋滞が終わりましたよ! いざ、出陣だ!!」
「気をつけた方がいいよ」
「あ! いつの間にか覆面パトカーに追尾されていたようです・・・」
「ほらね!」
ひとりごと
逆境を楽しまねば、順境時に失態を犯す。また、順境時に驕れば、逆境時に慌てることになる。
心に刻んでおきたい言葉ですね。
小生の場合は、とくに順境に驕らないというのが難しいようで、これまでに数々の失敗をしてきました。
昨日も高速道路で渋滞に遭遇して、イライラしていました。
次の渋滞時には、心安らかに受け入れてみます。