今日のことば

【原文】
身労して心逸する者は貧賤なり。心苦しんで身楽しむ者は富貴なり。天より之を視れば、両(ふたつ)ながら得失無し。〔『言志耋録』第144条〕

【意訳】
身体を労苦して心をのびやかにしている人は貧賤な人である。心を労苦して体はのびやかにしている人は富貴な人である。これを天から見るならば、どちらが得でどちらが損だとはいえない(どちらも違いはない)

【一日一斎物語的解釈】
身分の低い貧しい人は、重労働で体は酷使するが、それでいて心はゆったりのびやかであり、身分の高い富んだ人は、仕事面では体を酷使することはないが、心をいつもすり減らしているので、いったいどちらが良いのかは一概には判断できない


今日のストーリー

営業部特販課の雑賀さんと営業2課の石崎君が深夜まで残業しているようです。

「あー、月曜日からこんな時間まで残業かよ! これじゃ身体がもたないよ!!」

「キツイですよね。腹も減ったしなぁ」

「何だお前ら、まだ残業していたのか?」
神坂課長がドクターとの会食を終えて帰社したようです。

「あれ、課長。今日は会食だったのでは?」

「そうだよ。ここから歩いて行ける場所だったからな。荷物を置いて帰ろうかと思ったら電気がついていたから上がってみたんだよ」

「ということは、おいしいものをたくさん食べたんでしょうね?」

「鰻な」

「マジですか? それに酒も飲んでるんでしょ? 良いよなぁ、偉くなると月曜日から高級料亭だもんなぁ」

「雑賀、お前はどうしてそうひがみ根性で人を見るのかねぇ」

「事実じゃないですか! 俺たちはこんな遅くまで残業しているのに、お偉いさんは鰻ですよ。泣けてくる!」

「大袈裟な野郎だな。たしかに、若手や中堅の社員さんは、身体を酷使してはいるだろう。でも、それほど気は使っていないはずだ。ところが俺たちは、身体は楽かもしれないけど、相当に気をつかっているんだ。今日だって、A医大の教授だからな。めちゃくちゃ気を使って、心は擦り切れてるよ」

「どっちが良いのか、簡単には判断できませんね?」

「少年、そのとおりだ! むしろ今となっては、ひたすら働いていた若い頃の方が楽だったと思うくらいだよ」

「鰻の味もわからないくらいですか?」

「そりゃ、旨いのは旨いよ。でもさ、お前らと一緒に食べた方がどれだけ旨いことか」

「じゃあ、連れて行ってくださいよ!」

「今日は勘弁してくれよ。そうだ、そのIT案件を決めてくれたらご馳走するよ」

「神坂課長、約束してくだいよ!!」

「雑賀、お前はもっと人を信用すべきだ。この俺が嘘をつくことがあるか?」

「けっこうあります」

「石崎、そこは違うだろう! 『おっしゃるとおりです』って、俺を気持ちよくするところだぞ!」

「たしかに! 失敗しました。(笑)」

「毎度、ウーパー・イーツです!」

「え、俺たち何も頼んでないですよ・・・」

「お、吉田屋の牛丼じゃないですか! それも2つありますよ」

「お兄さん、早いねぇ。まだ20分も経ってないじゃない」

「ちょうど吉田屋の近くに居たので。1,000円になります」

「課長の奢りですか?」

「安くてすまんな。一応、大盛りにはしておいた。今日はこれで勘弁な。じゃ、お先に!」

神坂課長はウーパー・イーツの配達員さんと談笑しながら帰っていったようです。

「お前のボスはカッコいいな」

「ああいう所は尊敬します。ここだけの話ですけどね!」


ひとりごと

年齢と経験を重ねると仕事の質と量が変わってきます。

若いときは、質より量の仕事をするので、体力的にもキツイものですが、40代になると、質の高い仕事が求められ、その分身体への負荷は減っていきます。

しかし、これはいったいどちらが良いのか、と言われると、たしかに容易には回答できませんね。

いずれにしても、質の高い仕事ができるようになるには、量をこなす必要があるのは事実です。

年齢とともに質を高める仕事をしなければいけません。


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