今日のことば

【原文】
舟に楫艪(しょうろ)無ければ、則ち川海も済(わた)る可からず。門に鎖錀(さやく)有れば、則ち盗賊も闚(うかが)う能わず。〔『言志耋録』第146条〕

【意訳】
舟で行くにも舵や櫓がなければ、川や海を進むことはできない。また、門に鍵や鎖がかかっていれば、盗賊も盗み入ることはできない

【一日一斎物語的解釈】
時と状況に応じて、必要とするものは変わるが、それを忘れている者が多い。


今日のストーリー

営業部特販課の大累課長が神坂課長のデスクにやってきたようです。

「神坂さん、ちょっと運転手をお願いできませんか?」

「なんで俺がお前の運転手をしなきゃいけないんだよ!」

「家に免許証を忘れちゃったんですよねぇ。F大までお願いします!」

「仕方ねぇな。じゃあ、俺も久しぶりにF大の内視鏡室にお邪魔してみるか」

二人はF大に向かう車中にいます。

「免許証は営業のパスポートだ。それを忘れるとはお前も三流だな」

「今日は何を言われても文句は言えません・・・」

「いいか、大累。船を出すには舵がいる。泥棒に入られたくなかったら、鍵をかけなければならない。ところが、それが出来てない奴が多い」

「船を出すのに舵を忘れるバカがいますか?」

「バカたれ、これは比喩だ。たとえば人生には攻めるべきときと守るべきときがある。船を出すのに舵を忘れる奴はいないかも知れないが、人生において攻めるべきときに志を忘れている奴は多い」

「は?」

「家の戸締りはしっかりする癖に、人生において守りを固めるべきときに、信念を忘れる奴もまた多いんだよ」

「何を言ってるんですか?」

「つまり人生においては、攻めるべき時には志が必要であり、守るべき時には信念が必要なんだ」

「そうですね」

「あ、お前今、適当に返事したな!」

「だって、運転手をお願いしたから文句は言えないと思っていたけど、あまりにも何を言ってるのかわからないから」

「営業のパスポートである免許証を忘れるような三流営業マンに志や信念はないんだろうな」

「いつまで続くんですか!」

「F大に着くまでだなんて思うなよ。帰りもだからな!」

「あ、神坂さん。帰りはちょっと寄り道したいので電車で帰りますから、お気遣いは要りませんよ」

「寄り道はどこへ? 俺も付き合うよ、運転手として!」

「勘弁してくれぇ〜」


ひとりごと

必要な時に必要なものを忘れる人は少ないようですが、心の持ち物を忘れている人は多いようです。

夢・志・信念、こうしたものを忘れていては、人生という長い旅を全うできません。

もう一度、家を出る前に、生きるための大切な持ち物チェックをしてから外出しましょう!!


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