今日のことば
【原文】
「凡そ事豫(あらかじめ)すれば、則ち立ち、豫せざれば則ち廃す」とは正語なり。之を家・国に用う可し。「水到りて渠(みぞ)成り菓熟して蔕(へた)落つ」とは悟語である。之を一身に用うべし。〔『言志耋録』第147条〕
【意訳】
『中庸』に「凡そ事豫すれば、則ち立ち、豫せざれば則ち廃す(何事でも事前に準備して計画をすれば成就するが、これに反して事前によく準備しなければ失敗するものである)」とあるのは、道理のとおった言葉である。この言葉は家を整え、国を治める際に活用すべきである。また「水到りて渠成り菓熟して蔕落つ(水が流れて来て溝が自然にできるし、果物が熟すると蔕が自然に落ちる)」という言葉があるが、これは悟りの言葉である。自分自身の身に修めるべきである
【一日一斎物語的解釈】
準備次第で成否が分かれる。仕事をする上ではこれを忘れてはいけない。また、機が熟せば実りを得られる。自己修養に励む者はこれを忘れてはいけない。
今日のストーリー
営業2課の本田さんが帰社しました。
「本田君、どうだった?」
「あ、神坂課長。今回は準備不足がモロに出てしまいました。情報をキャッチしたのが遅すぎました」
「かなり形勢は厳しいか?」
「相手のプレゼンを見たわけではないので、ハッキリとは言えませんが、印象的には当社の方がインパクトを残せなかったのではないかと感じました」
「そうか。たしかに、Y社さんが先行していた商談に無理やりねじ込んだ形だからな。相手はかなり先行してドクターとも話ができているだろうしね」
「そうなんです」
「『準備も仕事のうち』というけど。やっぱり準備は大切だねぇ」
「はい、その準備には、情報収集も含まれると考えるべきですね。早く情報を得れば、それだけ早く手を打てますから」
「そうだね。そういう意味じゃ、大手のY社は1病院当たりの担当者の数がウチとは比べ物にならないからな。なかなか難しい問題だな」
「はい。ただ、こういう形でプレゼンまで漕ぎ着けたことは決して無駄ではないと思っています」
「うん。やはり経験を積むことも大切だからね。プレゼン力というのは、営業のスキルの中でも重要なスキルだよ」
「はい。まだ私の場合は、過度の緊張があって、早口になったり、話し方が単調になったりしがちです」
「えー、あー、うーはどう?」
「意識はしましたが、やはり何度か出てしまいましたね」
「無駄な音は中身をぼやかすし、時間の無駄でもあるから、ゼロにしないとな」
「はい」
「『練習は裏切らない』という言葉があるように、鍛錬を積んでいくと、機が熟す時が来る。あるとき、何かを悟ったかのように、プレゼンが上手になるものだよ」
「たしかに、神坂課長のプレゼンは、無駄な音が一切ないし、キレがありますよね」
「本田君、そこのところ重要! もっと大きな声で言ってくれる」
「そんなことしなくても、みんな気がついていますよ!」
「そうかなぁ? あそこで鼻くそをほじくっているガキは、絶対そう思ってないと思うけどな」
「石崎ですか? そうでもないですよ」
「あいつが成長して、機が熟せば、ちゃんと理解してくれますよ!」
「俺が生きている間に、あいつは熟すのかねぇ?」
ひとりごと
仕事は準備で8割決まる。
小生はそう信じています。
準備を怠れば、不安になります。
その不安が思わぬ失敗を招くのです。
また、鍛錬を続ければ、必ず成長します。
成長スピードは人によってまちまちですが、必ず成長します。
準備と鍛錬、これは仕事を進める上で、いや何事においても、最も大切なことなのでしょう。