今日のことば

【原文】
凡そ物満つれば則ち覆るは天道なり。満を持するの工夫を忘るる勿れ。満を持するとは、其の分を守るを謂い、分を守るとは、身の出処と己の才徳とを斥(き)すなり。〔『言志耋録』第149条〕

【意訳】
概して物が一杯になるとひっくりかえるというのは自然の法則のようなものである。満ちた状態を維持するための工夫を忘れてはならない。満ちた状態を維持するとは、自分の分際をよく理解して守ることを言い、分を守るとは、自分の出処進退をよく鑑み、自分の才能や徳性をよく把握して行動していくことを指すのだ

【一日一斎物語的解釈】
好調な時期がくれば、いつか必ず不調な時期もくる。好調期を維持したいのであれば、自分の分をよく弁え、自分の能力や徳性をよく理解して行動すべきである。


今日のストーリー

「マジで?! 梅ちゃん、また受注したの?」
営業2課の石崎君が驚いて大声を上げています。

「はい。3週連続で器械を受注できました!」
梅田君が今週も器械商談を受注したようです。

「凄すぎるよ。神ってるね!」

「石崎、すでに追い抜かれたようだな?」
神坂課長がこの騒ぎを聞きつけてやって来たようです。

「神ってるなんて言っちゃったから、カミサマが来ちゃった」

「なんだ?」

「いや、なんでもないです。梅ちゃんが3週連続で受注したんですよ。私はまだ2週連続が最高です」

「梅田、何かをつかんだのか? 今月の頭の会議では、そんなに確度の高い案件はなかった気がするんだけどな」

「はい、2件は先月に飛込んだ商談です。こんなに早く決まるとは思ってもみませんでした」

「そうか。せっかく気分が良い時にこんなことを言うのは、ちょっと申し訳ない気もするんだけどな。話を聞く限り、実力という感じではなさそうだな」

「課長、今そんなこという必要ありますか? せっかく、梅ちゃんが喜んでいるのに」

「それはそうなんだよ。でもな、梅田にはこのまま好調を維持してもらって、何かをつかんでもらいたいんだ」

「はい。完全に調子に乗りそうな感じなので、釘を刺してください。(笑)」

「ははは。そう言ってくれると話しやすい。ありがとうな。お前はまだ2年生だ。これが実力だとは思わないで欲しい。運というのは、良い時もあれば悪い時もある」

「はい」

「まだ、自分には学ぶべきことがたくさんある、ということを忘れないで欲しいんだ。まだ、営業のスキルもマインドも半人前だということをな」

「ひどいなぁ。そこまで言いますか!」

「かつて俺が梅田みたいに絶好調だったときがあってな。ご存じのように、すぐに調子に乗る俺のことだ。そこで完全に勘違いをした」

「誰もアドバイスをしてくれなかったのですか?」

「してくれたさ。佐藤部長もサイさんも。しかし、聞いてなかった」

「さすが、課長」

「やかましいわ。それで、ある時、ウチのVIPユーザーを怒らせてしまってな。大きな病院の窓口を失ったんだ」

「やってしまいましたね」

「正直、そのことは数年、心の奥にずっと残ったよ。なんて自分は馬鹿だったのか、ってな」

「私には同じ経験をさせたくないから、こんな話をしてくれたんですね?」

「梅田だけじゃない。石崎にもな!」

「課長・・・」

「お前たちには期待しているんだ。もちろん失敗もすべきだとは思う。でも、俺の営業人生でひとつだけやり直せるとしたら、あの出来事を一からやり直したいんだよな」

「神坂課長、ありがとうございます。石崎さんも私も、自分の力を弁えて、もっと努力しますから、これからもご指導よろしくお願いします!!」

「梅ちゃん、それ、俺に言わせてよ!」

「ほら、やっぱりもうお前は梅田に追い抜かれたかもな。(笑)」


ひとりごと

好調な時期がずっと続くことはなく、いつかは不調になる時が来ます。

しかし、心構えを正しておけば、好調な時期を維持することは可能かも知れません。

それには、自分の分際を弁え、自分の実力と才能を知ることが重要だ、と一斎先生は言います。

若かりし頃の小生を思うとき、この言葉の意味が痛いほど心に突き刺さってきます・・・。


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