今日のことば

【原文】
「心を養うは寡欲より善きは莫し」。君子自ら養う者宜しく是の如くすべきなり。人を待つに至りては則ち然らず。人をして各々其の欲を達せしむるのみ。但だ欲も亦公・私有り。弁ず可し。〔『言志耋録』第151条〕

【意訳】
『孟子』尽心章句下篇に「心を養うは寡欲より善きは莫し(心を修養していくには、欲望を少なくするよりよい方法はない)」とある。君子を目指す人が修養を積む際には、これを実践すべきである。しかし、他人に対してはそうではない。各々の欲望を達成させるように動くだけである。ただし、その欲には私欲と公欲がある。そこをしっかりと明弁しなければならない

【一日一斎物語的解釈】
人の上に立つ人は、メンバーの志を完遂させることに最大限の努力を払うべきである。


今日のストーリー

営業1課の新美課長が佐藤部長をランチに誘ったようです。

「新美君からランチのお誘いなんて珍しいね」

「ちょっとご相談に乗って頂きたくて」

「神坂君ではなくて、私に?」

「はい。マネジメントに関することは、やはり佐藤部長にお聞きしたくて」

「それは光栄です」

二人は、近くのお寿司屋さんに入って、すし定食を頼んだようです。

「それで、どんな相談なの?」

「マネージャーになって、できる限りメンバーの数値計画達成のためにサポートしようと努力をしてきました。それなりにやれた部分もあると思っているのですが、なかなか組織としての一体感がつくれないんです」

「なるほど。メンバーとの面談は、やっているの?」

「月に一回程度ですが」

「数字の話が中心なのかな?」

「そうですね。今後のアクションプランとか、商談の進め方といった話が多いです」

「もう少し先の話をしてみたら?」

「先の話ですか?」

「メンバーそれぞれがこの会社の仕事を通じて、どんな志を遂げようと思っているのか。それを聞き出すと良いと思うよ」

「メンバーの志・・・」

「佐藤一斎先生は、他人との関係づくりにおいては、他人の欲望を達成させるように動きなさい、と言っている。ただし、その欲望は、私欲ではダメで、公欲である必要はあるけどね」

「なるほど。そういう話はしていないですねぇ」

「清水君、廣田君あたりは、しっかりした志を持っているんじゃないのかな?」

「清水さんは、いつまでもモノ売りでいてはダメじゃないかと最近よく言っています。患者を増やすための支援やコンサルティングを進めるべきだと」

「ほぉ」

「私自身の器が小さいので、それはディーラーの仕事ではないと思っていました。それで、軽く受け流してしまったんです。だから、清水さんはあまり私に相談を持ち掛けてくれないのかも知れません」

「その話についても一度、ディーラーとして何ができるかを一緒に話し合ってみたら良いのではないかな?」

「ありがとうございます。さっそく、面談を実施してみます」

「じゃあ、お礼にお支払いは私がしておくよ」

「え、なぜですか? 支払いは私がしますよ。相談に乗って頂いたのですから!」

「上司として、部下や後輩から相談されることほどうれしいことはないんだよ。そのお礼としてね!」

「参りました! 私にはそういう発想がありませんでした。だから、メンバーが相談に来てくれないんですね」

「まだまだ、これからだよ!!」


ひとりごと

リーダーとして、メンバーのサポートをするというのは、誰でも考え付くことです。

しかし、一斎先生はより具体的に、メンバーの志を成し遂げるための支援をせよ、と教えてくれます。

古典を学ぶ楽しさやありがたさは、こうした章句に巡り合えた時に実感できるものです。


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