今日のことば

【原文】
草木は固より山野の物なり。山野に在れば則ち其の所を得て、人の灌漑を煩わさず。会(たまたま)奇花異草有りて、其の間に生ずれば則ち花匠(かしょう)抜き取りて以て盆翫(ぼんがん)と為し、之を王侯に普(すす)む。第(た)だ花匠に於いては幸たるも、而も花卉(かき)は則ち不幸と為す。人事も亦或いは此に類す。〔『言志耋録』第155条〕

【意訳】
草や樹木は本来山野に存在するものである。山野にあれば自ら生きるべき場所を得て、人から水を与えてもらう必要もない。ところが、時に珍しい草花がその中にあると、植木職人がそれを抜き取って盆栽とし、王様や諸侯に進上する。これは植木師にとっては幸いであるが、草花にとっては不幸なことである。もしかすると人間社会の出来事もこれと同じなのかも知れない

一日一斎物語的解釈
花にも咲くべき場所があるように、人にも自身の能力を発揮するのに最適な場所が存在する。人の上に立つ者は、適材を適所に配置すべきである。それは、お互いにとって幸せなことである。


今日のストーリー

「雑賀、お前、あの大口商談を決めたらしいな!」

神坂課長が、営業部特販課の雑賀さんが大口のIT商談を受注したと聞いて、雑賀さんのデスクにやってきたようです。

「あ、神坂課長。情報が早いですね。ありがとうございます!」

「あの商談は、ウチの中じゃお前以外には決められなかっただろうなぁ」

「そう思います」

「ははは、相変わらず謙虚さは足りねぇな」

「雑賀、そういう時は嘘でも、『みなさんのお陰です』とか言うもんだろ!」
上司の大累課長が指摘しています。

「しかし、やっぱりどんな人材にも長所がある。そこを見て、しっかりと伸ばしてあげるのが上司の仕事だよな、大累」

「なんか、含みのある言い方ですね?」

「バレた? だってお前は、『雑賀は営業は無理だ』って言ってたんだからな」

「はい、よく言われていました。あ、今でも言われます」

「ウソつけ! 最近は言ってねぇぞ!!」

「ウチは商社だからな。営業がダメだったら、他の部署に行ってもらうってわけにはいかないんだ。なんとかお前の特性を活かせる場所を探すしかなかったんだよ。お前がIT関連の仕事を受け持つことで、大累もお前もハッピーになれたんだから、よかったよな!」

「もっと早く私の良さを見つけてもらいたかったですよ」

「この野郎、あんまり調子に乗るなよ。調子に乗るとロクなことはないぞ」

「そうだぞ、雑賀。経験者の意見は丁重に承っておけよ!」

「大累に言われたくはないわ!」

「お二人は仲が良いですよね」

「そういう風によく言われるんだけどよ。なあ、大累。俺たちって仲が良いのか?」

「みんなわかってないですよね。神坂さんみたいな狂犬の相手は、俺にしかできないってだけなのに」

「そういうことを言うなら、俺も言わせてもらうぞ。お前みたいな生意気なだけで、何もできなかった奴が課長になれたのは、誰のお陰だと思ってるんだ!」

「まあまあ。お二人がそうやって喧嘩ばかりしないように、適材を適所に配置した佐藤部長はさすがですよね?」

「たしかに・・・」

「雑賀、お前が言うな! 神坂さん、納得している場合じゃないですよ!!」


ひとりごと

どんな人にも必ず長所と短所があるものです。

いま一緒に働いているメンバーが、ベストメンバーだとするなら、短所にはある程度目をつむり、長所を伸ばすことを意識すべきです。

そもそも他人の短所に気づくということは、自分自身が同じ短所を持っている証拠です。

他人の短所は自分のミラーなのですから。


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