今日のことば

【原文】
人己(じんこ)は一(いつ)なり。自ら知りて人を知らざるは、未だ自ら知らざる者なり。自ら愛して人を愛せざるは、未だ自ら愛せざる者なり。〔『言志耋録』第176条〕

【意訳】
他人と自己とはひとつである。自分のことを知っていて他人を知らないというのは、実際にはまだ自分のことも知らないということなのだ。また、自分を愛しても他人を愛せないというのは、まだ本当に自分を愛してはいないということなのだ

【一日一斎物語的解釈】
人間の本質というものは、自分も他人もさほど変わりはしない。他人を理解できないのであれば、それは自分というものを深く理解できていない証しなのだ。


今日のストーリー

営業1課の新美課長が廣田さんの相談を受けているようです。

「私はどうしても清水さんが好きになれません。あの上からの言い方には、それほどプライドの高くない私でもカチンときます」

「へぇー、廣田君でもそういう感情をもつんだね。(笑)」

「笑いごとではないですよ、課長」

「あー、ごめん。そうだよね。あの人は私よりも先輩だし、私も同じような感情を持つことは随分あったよ」

「やっぱりそうですか。どうやって折り合えば良いのでしょうか?」

「これは佐藤部長から言われたんだけどね。他人を理解できなかったり、好きになれないというのは、実は自分自身を理解していなかったり、自分自身を好きではない証拠なんだそうだよ」

「え?」

「私はそれを言われたときに、ハッとしたんだ。そうか、自分は清水さんにあって、自分にないものばかり見て、それでそのコンプレックスからあの人を嫌っていたんだなということに気づいた」

「・・・」

「それからは、自分にあるものを見つめなおしてみた。そうしたら、清水さんにはなくて、私にはあるものもたくさんあることが理解できた。そうやってお互いを補いあっていけばいいのかな、と思うようになった」

「それで、何か変わりましたか?」

「そうだねぇ、あの人からキツく言われても素直に聴けるようになったかな」

「清水さんはどうですか?」

「それまで私からあの人に意見を言ったことはなかったんだけど、自分の意見を素直にぶつけてみたんだ。そうしたら、意外とすんなりと理解してくれるんだよ」

「意外です」

「『なるほどな。お前はそういう考え方なんだな。今回に関してはその方がいいかもな。俺も試してみるよ』なんて言ってくれることもあるよ」

「私も営業成績では断然劣っていますし、コンプレックスを感じていたのかも知れません。私もそれなりに営業の経験を積んできましたし、自分の意見を言ってみることにします」

「うん、そうしてごらん。きっと、あの人はじっくり聞いてくれると思うよ」

「はい、その前にまず、自分の強みは何かをしっかりと棚卸ししてみます!」


ひとりごと

他人を理解できないのは、自分自身を理解していない証だ、というこの一斎先生の言葉には衝撃を受けました。

相手を理解できていないのではなく、自分自身を理解できていない、というアドバイスには目から鱗が落ちる思いがしました。

己を知り敵を知れば百戦して殆うからず。

孫子の言葉の真意は、この一斎先生の言葉と併せて考えると、より腑に落ちる気がします。


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