今日のことば

【原文】
自ら多識に矜(ほこ)るは浅露の人なり。自ら謙遜に過ぐるは足恭の人なり。但だ其の自ら欺かざる者は君子人なり。之を誠にする者なり。〔『言志耋録』第177条〕

意訳
自ら博学を誇る人は浅はかに自己を露呈する人である。またあまりに謙虚に過ぎる人は『論語』にある足恭(すうきょう)の人(過度に恭しい人で、それはうわべだけのものである)である。自分を偽らずにありのままに見せるのが君子と呼ばれる立派な人物である。そういう人が誠の道を実践できるのだ

【一日一斎物語的解釈】
自慢し過ぎる人間は浅はかであり、謙遜に過ぎる人もまた卑しい人物だと言える。真の君子というものは、自分に嘘をつかない人であり、こういう人こそが他人に対しても正直に応対できるのだ。


今日のストーリー

「あー、疲れたー!」
営業2課の石崎君が帰ってくるなり、ぼやいています。

「ザキ、どうしたの?」

「あー、ゼンちゃん。さっきまでM器械の竹原部長に捕まってたんだよ。あのおっさん、昔の自慢話しかしないから、疲れるよ」

「竹原さんか、確かにあの人は話も長いしね。昔、メーカーに居たことを偉そうに自慢するんだよな。たいしたメーカーでもないのにね!」

「本当だよ。O社やF社と違って、あの人のいた会社なんて、一般の人は誰も知らないのにな」

「人に自慢ばかりする人というのは、実は自分に自信がない証拠らしいよ」

「へぇー、でも確かにそうかもね。でも、わざとらしいくらい謙遜する人も好きじゃないけどね」

「そういうタイプもやっぱり自分に自信がないから、そうやって人にすり寄るんだってさ」

「同じM器械の寺井さんなんて、完全にそのタイプだよね。でも、あの人は部下には結構偉そうにしているらしいよ」

「え、そうなの? すごく人がよさそうに見えるのに」

「内弁慶ってことじゃない。やっぱりそういう人の謙遜って、なんかわざとらしい感じを受けるよね。それに比べると、俺がお世話になっている県立G病院の松本院長先生は、本当に人格者なんだろうね。俺みたいな若造にも、『石崎さん』って声をかけてくれて、いつも敬語なんだけど、全然嫌味がないんだよ」

「そういう人が本物の人格者なんだね」

「俺もそういう人を目指したいよ」

「それなら、自分に嘘をつかないことが大切らしいよ。結局、自慢も卑下も自分を欺いていることになるんだ。まずは自分を偽らない生き方が大切なんだって」

「へぇー、そう言わるとそうかもね。ところで、ゼンちゃん。いつの間にそんなことを学んだの?」

「この前、佐藤部長から教えてもらったんだ」

「ああ、評価面接のときか」

「そう」

「佐藤部長から言われると、スッと腹に落ちるよね。ところが、カミサマから説教されると、どうも腹に落ちないんだよなぁ」

「あ、ザキ。うしろ・・・」

「なに?」

「なんだと、小僧! 俺の話は腹に落ちないって?」

「げっ、いつの間に!!」

「明日はお前と同行だったな。みっちり良い話を聴かせてやるから、楽しみにしておけよ!!」

「いや、課長。実は朝からちょっと喉がいたくて、咳も出るんです。コロナかも知れないので、明日の同行は・・・」

「大丈夫、お互いにマスクをして、窓を全開にして走ろうじゃないか!」

「ゼンちゃん、助けて!!」


ひとりごと

『論語』にはよく「忠信」という言葉が出てきます。

この忠とは、人に忠誠を誓うことではなく、自分を欺かないことを意味します。

信とは、他人に嘘をつかないこと、約束を守ることです。

つまり、まず自分に嘘をつかない人にして、はじめて人にも嘘をつかない生き方ができるのだ、ということでしょう。

自慢も卑下も自分を欺く行為のようです。

厳に慎まねば!!


jiman