今日のことば

【原文】
余は年来多く人を視るに人各々気習有り。或いは地位を以てし、或いは土俗を以てし、或いは芸能、或いは家業皆同じからざる有り。余先ず其の気習を観て、輒(すなわ)ち其の何種の人たるかを卜するに大抵錯(あやま)らざるなり。唯だ非常の人は則ち竪に看(み)横に看れども、気習を著けず。罕(まれ)に斯の人を見る。蓋し人に加(まさ)る一等のみ。〔『言志耋録』第181条〕

【意訳】
私はこれまでに多くの人を観てきたが、人それぞれに気質や習癖がある。ある人は地位や身分から出てくる気質や習癖があり、ある人は生まれた土地の風習、ある人は芸術的な才能、ある人は家業から出てくる気質や習癖をもっていて、みな同じではない。まずその人の気質や習癖をみて、その人がどういったタイプの人かを予測してみるが、大抵見誤ることはない。ただし、優れた人物はあらゆる角度から観察しても、気質や習癖をつかむことができない。稀にこういう人物に会うことがある。こういう人は人より頭一つ抜きん出ているといえよう。

【一日一斎物語的解釈】
大概の人物は、気質や習癖を観察すれば、どんな人物かを判断できる。しかし、第一等の人物となると、あらゆる角度から観察しても、その人物を把握し得ないところがある。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、佐藤部長と同行中のようです。

「いやー、K医大の勝山理事長のオーラは凄いですねぇ」

「あの方は、ドクターであり、政治家であり、実業家でもあるからねぇ」

「とにかく目が笑ってないんですよね。ちょっとこっちがおかしなことを言うと、キッと睨まれますから」

「言葉選びはどうしても慎重になるよね」

「私も長くこの仕事をしているので、大概の人は話し方や目つきを見ていると、性格なり人格なりが見えてくるんです。でも、勝山理事長だけは、さっぱりわかりません」

「本当の大人物というものは、そういうものなのかもね」

「そうですね。1時間面談すると、寿命が3年くらい縮まる思いがします」

「ははは、神坂君がそこまで緊張するのは珍しいね」

「勝山理事長は別格です」

「我々も人から見透かされないような人物になりたいね」

「部長はかなり近づいていますよ。私はまだまだです。というか、遠ざかっているかも」

「いやいや、そんなことはないと思うよ」

「本当ですか?」

「この前、石崎君が言ってたよ。神坂課長と話をすると、寿命が縮まるってね」

「それは、私が怖いからですよ! 部長、分かってて言ってるでしょう❗️」

「そんなことはないよ」

「顔が嘘をつく人の顔になってます」

「しまった、表情を読み取られたか!」


ひとりごと

真の大人物の前に出ると、なぜか心が落ち着かないのは、小生が凡人ゆえでしょうか?

この人の前では誤魔化しがきかないな、と思わされてしまうからでしょうか?

特に言葉を発せずとも、相手にそんな感じを抱かせる人物になるには、並大抵の鍛錬では難しいでしょう。

しかし、難しいとわかっていても、その域を目指せば、今よりは成長できるはずです。


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