今日のことば
【原文】
有りて無き者は人なり。無くて有る者も亦人なり。〔『言志耋録』第182条〕
【意訳】
たくさんいるようで実際にはなかなかいないのが人材である。しかし、全くいないようでいて、実は近くにいるのもまた人材である。
【一日一斎物語的解釈】
人材というものは、自ら発掘し、育てていく気概があれば、その原石は意外と多く存在するものだ。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、大累課長とランチ中のようです。
「しかし、どこの会社も人材難みたいですね。M社はまた若手が辞めたらしいですよ」
「あそこは社長がボンボンだからなぁ。自分はランボルギーニを乗り回しておいて、社員のボーナスをケチったら、そりゃ人もついてこないわな」
「まったくです」
「でもな、ウチみたいな中小企業ごときが、優秀な人材が入って来ないって嘆いたって、それは考えてみれば当然のことだろ?」
「まあ、そうですけどね。でも、ウチの平社長は、中途社員ではなく、新卒を採って育てるって方針ですよね?」
「俺はそれが正しいと思う」
「なぜですか?」
「変な型のついた中途社員より、どんな型にでもはめられる新卒の方がぜったい育てがいがあるぜ」
「おぉ、たしかに!」
「いまいるメンバーがベストメンバーっていう考え方があるんだよ」
「どういうことですか?」
「いまいる奴がダメだからと追い出したら、下手するともっと酷いのが入ってくるかも知れないぞ」
「それはありがちですね」
「それより、今目の前にいるメンバーこそが、わがチームのベストメンバーだと考える。そうすれば、各自の欠点などには目をつむり、長所に目が向くようになるだろう」
「たしかに、最近は雑賀の良さが見えてきました!」
「つまり、人材というものは、自らが育てていくべきものなんだよ。ただし、無理に教えてはダメだな。根を養えば樹は自ずから育つものなんだ」
「根を養うというのは、モチベーションを高めるってことですかね?」
「お、さすがは可愛い後輩だ。ものわかりが良いな!」
「ダメだ!」
「な、なんだよ!」
「神坂さんに誉められると、鳥肌がたちます!」
「やっぱりお前は可愛くない!!」
ひとりごと
これからの時代、優秀な人材が入ってくるのを待っていては、益々人材難の時代となるでしょう。
それより、自らの手で、優秀な人材を掘り起こし、育てていくべきです。
しかし、強制もまた時代にそぐわないもの。
やる気にさせる工夫を凝らすしかありません!