今日のことば
【原文】
人我に同じき者あらば、与(とも)に交る可し。而も其の益を受くること太だ多からず。我れに同じからざる者あらば、又与に交る可し。而も其の益は則ち尠(すくな)きに匪(あら)ず。「他山の石、似て玉を磨く可し」とは、即ち是なり。〔『言志耋録』第184条〕
【意訳】
自分と同じ趣味嗜好の人がいれば、交際するとよい。しかしその交際から得るものはそれほど多くはない。自分と趣味嗜好が異なる人がいれば、やはりお付き合いをすべきである。その交際から得るものは決して少なくない。『詩経』にある有名なことば「他山の石、似て玉を磨く可し(他山の石のようなものでも、自分の玉(人格・知徳)を磨く助けともなる)」とは、それを言うのである。
【一日一斎物語的解釈】
自分と性格や趣味の違う人と付き合う方が、人間として得るべきものは多い。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、営業2課の梅田君と同行中のようです。
「午後に面会するME(臨床工学技士)の風張さんは、私とキャラが正反対なので、いつもうまくかみ合わないんです」
「ははは。それは楽しそうだ。そのボタンの掛け違いをとくと拝見させてもらうよ」
「えー、フォローしてくださいよ!」
「もちろん、ヤバくなったらな。それまでは高みの見物を決め込むかな」
「気が重くて、食事も喉を通らないですよ」
「嘘つけ! 食事が喉を通らない奴が牛丼特盛をつゆだくで頼むわけないだろ!!」
「普段はメガ盛ですよ!」
「知るか!!」
「はぁー」
「でもな、梅田。自分と性格や趣味が合わない奴とは友達にならないだろ?」
「もちろんです! 風張さんとは絶対友達になれません」
「うん。ただ、実は趣味や性格が真逆の人と付き合うと意外と多くの気づきがあるんだよ。友達にはなれないんだから、せめて仕事ではそういう人と積極的に付き合って、自分を磨くのも悪くないぞ」
「課長もそういう苦手な人っていましたか?」
「俺もお前と同じく、チャラいキャラだったからな。真面目で寡黙な人は大の苦手さ」
「風張さんは、まさにそのタイプです」
「そういう人は、自分とは違う視点とか切り口で物事を見ていたりするんだよ。だから、『ああ、そういう考え方もあるのか』と気づかされることもある」
「課長は大人ですねぇ」
「そういうの上から目線って言うんだぞ。そういうことを言うと、風張さんは怒るだろうな」
「あ、そうなんです。私が何か言うと、冷たく、『そういうことじゃないです』とか言われます」
「ははは。益々楽しみになってきた。しかし、やっぱり40を超えたおっさんにメガ盛は無理だった・・・」
「だから言ったじゃないですか。凄い量ですよって」
「お前と俺は、キャラは似てるかも知れないが、胃袋の大きさはだいぶ違うみたいだな。勉強になったよ・・・」
ひとりごと
性格が正反対だったり、趣味や思考回路の違う人と友達になるのは難しいことです。
しかし、仕事であれば、お付き合いせざるを得ないときもあります。
そして、そういうお付き合いからは意外と多くの学びを得ることができるのも事実です。
要するに、学ぶ側の心次第ということでしょうが。