今日のことば
【原文】
生徒、詩文を作り、朋友に示して正を索(もと)むる、只だ改竄の多からざるを怕(おそ)る。人事に至りては、則ち人の規正を喜ばず。何ぞ其れ大小の不倫爾(しか)るや。「子路は告ぐるに、過ち有るを以てすれば則ち喜ぶ」とは、信(まこと)に是れ百世の師なり。〔『言志耋録』第185条〕
【意訳】
生徒が詩や文章を作り、学友に添削を求める場合には、ただ字句を多く修正されることを不安に思うものだ。ところが人間に関わる事柄となると、それを戒め正すことを喜ばないのは、なんとも辻褄が合わない話ではないか。『孟子』には「「子路は告ぐるに、過ち有るを以てすれば則ち喜ぶ」とあるが、これはまさに三千年にわたって人の手本とすべきことではないか。
【一日一斎物語的解釈】
自分の作品を添削してもらうことには、一定の理解を示すのに、自分の人格について改善を求められると理解できないのが凡人の性である。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、元同僚・西郷さんが主査する『論語』の読書会に参加しているようです。
「あぁ、そういうことなんですね。じゃあ、私の考え方が違っていたんだなぁ」
「ははは」
「サイさん、何がおかしいんですか?!」
「神坂君が自分の意見をそんなにアッサリ撤回するなんて、仕事の場面じゃそうそう見れないよね」
「勘弁してくださいよ。私だって少しは成長しているんですよ。あの頃の私とはもう別人です」
参加者一同、爆笑しています。
「若い頃の神坂君は、自分の性格や考え方を訂正されると素直に聴き入れられない感じだったよね?」
「はい、それは認めます」
「でも、一般の人は多かれ少なかれそういう面はあるよね」
「サイさんにそう言ってもらえると、救われます」
「その点、子路という弟子は凄いんだよ」
「あのイケイケキャラの子路ですか?」
「そう。彼は、人から自分のあやまちを指摘されると素直に喜んだというんだ」
「マジですか? あいつにそんな懐の広さがあったとは・・・」
またも一同爆笑です。
「いやー、結構私に似てるキャラだなと思って親近感を抱いていたのですが、一気に遠くに行ってしまいました」
「ははは。でも、神坂君も少しずつそういうキャラに近づいているんじゃないかな?」
「そうだと嬉しいですけどね」
「結局、受け取る側の度量も大きいんだけど、やはり伝える側の工夫も必要だよね」
「そうなんですよ。特に今の若い奴には、ストレートに、『それはダメだ』なんて言うと、一瞬にしてうなだれてしまいますからね」
参加者の皆さんがうなずいています。
「まず、最初に成長していることを認めてあげた上で、指摘すべき点を指摘する、というステップが大事だよね」
「まさにそうです! あ、ということはですよ! 私が若かりし頃の上司たちは、配慮が足りなかったのかも知れませんよ!!」
ひとりごと
他人の性格について、改善を促すのはとても難しいことですね。
伝え方を間違えると、相手は傷つくか、あるいは反抗的な態度を示すものです。
自分が指摘を受けるときは素直に受け容れ、相手に指摘するときには十分に配慮する。
そうした意識が重要なのでしょう!