今日のことば

【原文】
凡そ人は同を喜んで異を喜ばず。余は異を好んで同を好まず。何ぞや。同異は相背くが如しと雖も、而も其の相資する者は、必ず相背く者に在り。仮(たと)えば水火の如し。水は物を生じ火は物を滅す。水、物を生ぜざれば、則ち火も亦之を滅する能わず。火、物を滅せざれば、則ち水も亦之を生ずる能わず。故に水火相逮(およ)んで、而る後に万物の生生窮り無きなり。此の理知らざる可からず。〔『言志耋録』第186条〕

【意訳】
だいたい人は価値観が同じ人との交際を喜んで、異なる人を喜ばない。しかし、私は価値観が異なる人との交際を好み、同じタイプの人を好まない。どうしてだろうか? 異なるということは一見相反することのようで、実は互いに得るところが大きい人というのは、必ずといっていいほど価値観の異なる人なのだ。たとえば水と火である。水は万物を生み、火は万物を滅却する。水が物を生じなければ、火は物を滅却できない。また、火が物を滅却しなければ、水はあらたに物を生じることができない。そのように、お互いに影響を与え合うからこそ、万物の生成に窮まりがないのである。この道理をよく理解しておかねばならない

【一日一斎物語的解釈】
価値観の同じ人とばかり付き合っていては、得るものも少ない。価値観の違う者同士が交わるところに化学変化が生まれ、新たなものが生まれるのだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業1課の清水さんに呼び出されたようです。

「どうした、お前が外に呼び出すなんて珍しいな」

「まあ、とりあえず」

清水さんは、神坂課長のグラスにビールを注いでいます。

「おー、悪いな」

「おっさん、俺はどうやったら新美に理解してもらえるんだ?」

「どういうことだ?」

「俺なりにあいつを課長として立てて、1課をサポートしたいとは思っているんだ。だが、あいつは俺にあまりそういうことを望んでいない気がする」

「そうかな? 新美なりの配慮なんだと思うぞ。部下とはいえ、先輩であるお前に、ナンバー2のようなことをさせるのは申し訳ないと思っているだけだろう」

「そうなのかな?」

「新美と腹を割って話したのか?」

「いや」

「まず、そこからだろう」

「だけど、あいつと俺はあまりにもいろいろな価値観が違いすぎる。話をしても分かり合えるとは思えないんだよ」

「清水、価値観の同じ人間とばかりつるんで何が面白い?」

「え?」

「価値観の違う人間と意見をぶつけ合うからこそ、そこに化学変化が起きて、新しい思考ややり方が生まれるんじゃないのか?」

「・・・」

「清水、俺ではなく、新美を飲みに誘えよ」

「そうだな。おっさんとは価値観が近いから何でもわかってもらえるという安心感があって、つい声をかけてしまうんだよ。悪かったな」

「気にするな。後輩から声をかけてもらうのは嬉しいことだ。こう見えて俺も孤独でよ。後輩で声をかけてくれるのはお前くらいだったりするんだぜ」

「ははは。リーダーは孤独なんだな。あっ」

「そう。つまり、新美も孤独なんだよ」

「おっさん、いつも悪いな。今日は俺の奢りでいいよな?」

「最初からそのつもりですけど」

「OK。新美と話したら、また誘っていいか?」

「愚痴じゃないならな!」


ひとりごと

価値観の違う人と分かり合うのは難しいことです。

しかし、腹を割って話してみると、自分にはない考え方があることを知ることができます。

そして、お互いが無いものを補完し合う形で化学変化が生じ、新たな思考や戦略が生み出されることもあります。

積極的に化学変化を起こせる人間になりませんか?


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