今日のことば

【原文】
物遽(にわか)に視て以て奇と為す者、其の実皆未だ必ずしも奇ならず。視て尋常と為す者、卻って大いに奇なる者有り。察せざる可けんや。〔『言志耋録』第190条〕

【意訳】
物事には一見すると珍奇にみえることがあるが、実はそれらがすべて必ずしも珍奇だとは限らない。また見たところ平凡に見えるものが、かえって大変に珍奇である場合もある。よく観察することが重要である

【一日一斎物語的解釈】
物の価値はぱっと見では判断を誤ることもある。平凡に見えるものの中にこそ価値がある場合も多い。


今日のストーリー

営業2課の山田さんが善久君の相談に乗っているようです。

「神坂さん、2課の相談役は山田さんですね」

大累課長が神坂課長課長に話しかけています。

「そうなんだよ、課長はお呼びでないようだ」

「寂しいですか?」

「正直に言えばな。でも、山田さんは俺と違って話が聞ける。本田君に聞いたけど、あまりアドバイスはしないそうだ。ただ、うなずきながら話を聞いてくれるんだそうだ」

「それが一番ありがたいのかも知れないですね」

「うん。俺はどうしてもアドバイスしたくなるからな」

「そのうちに、それが説教へと発展し・・・」

「そうなんだよな。っていうか、お前もそうだろ!!」

「ご指摘のとおりです。(笑)」

「しかし、ウチの課にとっては山田さんの存在は貴重だよ。あの人は営業成績はイマイチではあるけど、経験は豊富だし、ああやってみんなの話を聞いてくれる」

「そうですね。ぱっと見はちょっと冴えない感じもありますが、とても貴重な戦力なんですね」

「そうなんだよ。山田さんは、メンバーから受けた相談はすべて俺に報告してくれるんだよ。情報を独り占めするようなことは絶対にしないから、安心して相談役を任せられるんだよな」

「羨ましい。ウチの課にはそういう人はいませんねぇ」

「わからないぞ。俺も最初は山田さんのそういう長所を見抜けなかった。実は、佐藤部長からそれを指摘されて、はじめて気がついたんだよ」

「なるほど。じゃあ、俺も真剣にメンバーを観察してみれば、意外な長所を見つけられるかも知れませんね」

「間違いなく見つかるよ。俺はそういう視点でメンバーを見直してみて、すべてのメンバーに今まで俺自身が気づいていなかった長所があることを発見したんだ」

「へぇー、そうなんですねぇ」

「何事も平凡に見えるものの中に意外と価値があるのかも知れないな」

「逆に、一見するとものすごい価値があるように見えて、実はそれほどでもないというものも多いですよね」

「まったくだな。そういう意味でも本物を見抜く眼を養わないといけないよな」

「営業マンというのは、他の職種に比べれば、たくさんの人に会い、人を判断する場面も多いわけですから、いくらでも鍛錬はできそうですね」

「お互いに、まだまだ成長の余地はありそうだな!」


ひとりごと

ホンモノというのは、見かけは平凡に見えるものなのかも知れません。

ニセモノは自分がニセモノであることをわかっているがゆえに、外見を飾り、言葉を飾るのでしょう。

これはホンモノ、ニセモノということではないですが、小生の趣味である仏像観察においても、思い当たることがあります。

まだ修行の途上にある菩薩の仏像は、外見を装飾品で着飾っていますが、悟りをひらいた如来の仏像は、とてもシンプルな衣服を身に纏うだけなのです。

人を見抜くという点だけでなく、自分の行動面の反省にも、この章句は重要な示唆を与えてくれます。


asukadaibutsu