今日のことば

【原文】
簡黙沈静は、君子固より宜しく然るべきなり。第(た)だ当に言うべくして言わずは木偶(もくぐう)と奚(なん)ぞ択ばん。故に君子時有りて、終日言いて口過(こうか)無く、言わざると同じ。要は心声の人を感ずるに在るのみ。〔『言志耋録』第195条〕

【意訳】
口数が少なく沈着冷静であることは、君子であれば当然のことである。ただし、言うべきときに言わないのでは、木偶の坊となにも変わらない。よって、君子は然るべき時に一日中言葉を発したとしても失言はなく、無駄な言葉は一切発しない。要するに真心からの声は人の心を動かすということだ

【一日一斎物語的解釈】
多言は禍の元ではあるが、言うべき時に発言しないようでは、世の中の役には立たない。人の心を動かすのは、真心から出た言葉なのだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、同期の人事課・鈴木課長と打ち合わせをしているようです。

「しかし、最近は何かあると××ハラスメントだと言われるから、上司も辛いよな」

「正直に言って、弱者が弱さを武器にする時代というのは好きじゃないけど、今はそんな時代なんだろうな」

「これじゃ誰もマネージャーになりたがらなくなるよな」

「すでにそういう風潮はあるぜ」

「やっぱりそうか」

「だけど、お前が若い頃は暴言と圧力で上司を圧迫していたじゃないか。大竹課長なんか、よく俺のところに来て、『鈴木君、ちょっと神坂君を止めてくれよ。彼は怖いよ』って、よく泣きついてきたぜ」

「今じゃ仲良しなのにな」

「どうだかわからないぞ!」

「え、マジ?! タケさん、実は俺のことを恐れているのか?」

「ははは、心配するな。今は大丈夫だろう」

「びっくりさせるなよ! しかし、こういう時代、ますます言葉選びが難しくなるなぁ。ちょっと厳しいことを言うとすぐにハラスメントだって騒がれるなら、何も言わないという選択肢を取らざるを得なくなる」

「お前にそれができるのか?」

「できない。(笑)」

「だよな。(笑)」

「やっぱり、言うべきときに言わないのは、お互いにとってよくないと思う」

「その通りだよ。それでは、上司としての責務から逃避しているのと同じだ」

「そうだとすると、どうすれば良いんだ?」

「俺も答えはわからないよ。ただ、やっぱり大事なのは真心じゃないのかな。自分が今から部下に言うことは、果たして本当にそいつの為を思って言うことなのか? それとも、自分のエゴを押し通したいだけなのか? 発言する前に、それをしっかりと確認して、部下の為だと確信できたら発言すればいい」

「なるほど。たしかに、怒りに任せて発言をしていたらダメだよな。真心か」

「ちょっとクサい言葉だけど、結局はそこに落ち着くんだよな」

「本気・真心・熱意。そういう言葉を死語にしてはいけないよな。お互い中間管理職、熱い想いを本気で真心を込めて伝えていこう!!」


ひとりごと

部下をもつ立場の方には、生き辛い世の中になりました。

しかし、考えようによっては、心と心でつながる時代を取り戻すためには大切な時期なのかも知れません。

愛のある言葉は人を変える!

そう信じて、前へ進んでいきましょう!!

hofukuzenshin