今日のことば
【原文】
天は測る可からずして、而も或いは測る可し。人は測る可くして、而も或いは測る可からず。〔『言志耋録』第233条〕
【意訳】
天地自然の活動を予測することは容易ではないが、時には予測可能なときもある。また、人間の行動はある程度予測することは可能であるが、時には予測が難しい場合もある。
【一日一斎物語的解釈】
人間の行動をすべて予測することはできない。想定外を想定しておくべきだ。
今日のストーリー
新年早々、営業2課の梅田君が事故に遭ったようです。
「おー、梅田。大丈夫か?」
「はい、身体は大丈夫です。車は結構いっちゃってます」
「で、どっちの過失が大きいんだ」
「相手だと思います。私の方が広い道を走っていましたし、相手は一時停止をしていなかったと思います」
「避けられなかったのか?」
「はい、まさか一時停止を無視して突っ込んでくるとは思わなかったので」
「俺も昔、同じような事故に遭ったんだ。それ以来、こっちが優先でも相手が出て来るかも知れないと想定して走ることにしたんだ」
「私もこれからはそうします」
「人間って、時に想像を超える行動をすることがあるからなぁ。今回は怪我が無くて良かったけど、一歩間違えばもらい事故でも大怪我をすることもある」
「怖いですね」
「想定外を想定するっていう意識だな。言葉としては矛盾しているようだけど、これが大事な気がするんだ」
「課長は競馬をやっているから、想定外には慣れているんですね」
「あれは馬だからな。もっとわからないよ。何しろ口をきけないから、調子が良いのか悪いのかもよくわからないんだぞ」
「それでもやめられないんですね?」
「想定外を想定するには、よい練習の場だ」
「なんか都合の良い解釈ですね」
「なんだよ、いつの間にか俺が責められてるじゃないか! もらい事故とはいえ、事故を起こしたのはお前だぞ!」
「あ、そうでした。すみません」
「営業の仕事も同じだ。お客様の反応もいつも想定内とは限らない。想定外に備えておくんだな。今回の事故はそういう教訓にすればいい」
「はい、これから気をつけます。ところで・・・」
「すぐに代車が出ないらしく、家に帰る車がないんです。課長、送ってもらえませんか?」
「そうか、お前は車通勤だったな。俺は電車だぞ。まぁ、しょうがない。送ってやるよ」
「ありがとうございます! 明日の朝もお迎え、よろしくお願いします」
「マジかよ! もう一回言うけど、事故を起こしたのはお前だぞ!!」
ひとりごと
他人が自分の思うとおりに行動すると思ってはいけません。
人間の心ほど、理解することがむずかしいものはないかも知れません。
他人と接する時は、想定外を想定しておくべきですね。

