今日のことば

【原文】
白賁(はくひ)は是れ礼文の極処にして、噬嗑(ぜいこう)は是れ刑政の要処なり。政(まつりごと)に従う者、宜しく其の辞を翫(もてあそ)び以て其の旨を得べし。可なり。〔『言志耋録』第242条〕

【意訳】
白色の飾りは礼楽文物の極まりを示すものであり、ものを噛み砕く噬嗑は刑罰禁令の肝となるものである。政治を執り行う者は、その言葉を深く吟味してその意味するところを会得すべきである

【一日一斎物語的解釈】
礼楽で人を治める徳治主義と法と罰で人を治める法治主義の特色を吟味して、双方を上手に活用すべきである。


今日のストーリー

営業部特販課の大累課長と雑賀さんが揉めているようです。

「それは社則に書いてありますか?」

「そんなこと、いちいち社則に書けるかよ!」

「社則にないなら、罰を受ける筋合いはないですよね?」

「別に罰を与えるとは言ってないだろう。ただ、計画的に休むのであれば、事前に届け出をしろと言っているんだよ」

「でも、課長の言い方には棘がありました」

「当たり前だ、寝坊して遅刻になるのが嫌だから、午前休みにしたんだろ。そんなことを簡単に容認できないからな!」

「おいおい、どうした?」

「あ、神坂さん。聞いてくださいよ」

神坂課長に大累課長が事の経緯を説明したようです。

「なるほどな。で、雑賀。お前、寝坊なのか?」

「はい」

「そこは素直に認めるんだな」

「でも、遅刻扱いになるのは嫌だし、有給も取得できていないから午前休みに切り替えただけです」

「お前は、人の上に立つ気はないのか?」

「え?」

「お前が上司になって、部下が同じことを言ってきたら、それは仕方ないと考えるんだな? もし部下が、期末の一番忙しいときに、自分の権利だと言って有給を取った場合、お前はそれを認めるんだな?」

「そ、それは・・・」

「いいか、雑賀。会社の規則というものは、なるべく少ない方が良いんだよ。なんでもかんでも法律で縛られたらお前だって嫌だろう」

「それは、そうですね」

「なんでもかんでも法律にしないためには、社員の自主性が問われるんだよ。お互いの信頼の中で、文字にならないルールを作り上げるんだ」

「・・・」

「それが徳治ってやつだ。なんでもかんでも法と罰で治めるのは法治だ。徳治のマネジメントをする方が、上司も部下も気持ちよく仕事ができると思わないか?」

「まぁ、そうですね」

「後輩たちは今のお前を見てどう思っているんだろうな?」

「神坂課長、大累課長、申し訳ありませんでした。寝坊したこと、そして届け出なしに突然休暇を取ったことを深くお詫びします」

「雑賀、そっちの方がよほどカッコいいぜ。ただ、いつまでも寝坊を繰り返すのだけは何とかしてくれよな!」


ひとりごと

今の時代に、社則を一切設けずに、徳治だけで会社を運営することは不可能でしょう。

しかし法治国家に暮らす我々とはいえ、すべてを規則に書き留めようと思ってもできるものではありません。

徳治を上手に活かしながら、なるべく法で治める部分を少なくするような意識が大切なのではないでしょうか?


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