今日のことば
【原文】
天、地に資して万物泰(ゆたか)に、水、火に資して天功済(な)る。人倫五教皆此の理を具して家国治まる。須らく善く省察して自得すべし。〔『言志耋録』第244条〕
【意訳】
天は地に力を与えて万物を豊かにし、水は火と助け合って天のはたらきが完成する。儒家の教えである五倫はすべてこの理を具えているから、(これを実践すれば、)家庭も国家も治まるのである。すべてよく考察して自らその理を会得すべきである。
【一日一斎物語的解釈】
人間関係は、天と地、水と火がお互いに助け合い支え合うように、相手に施し自らは譲る意識をもてば、万事うまくいくものだ。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、大学時代の友人と食事をしているようです。
「どうした小坂、緊急事態宣言中に呼び出すなんて、深刻な問題でも起きたのか?」
「いや、そういうわけではないんだけどな。なんか、神坂と飲みたくなってな」
「要するに俺に励まして欲しいわけだな?」
「そういうこと。学生時代から落ち込んだときには、ノー天気なお前の言葉にいつも助けられてきたことを思い出してさ」
「失礼な奴だな。ノー天気はないだろう!」
「あ、たしかに。これはすまん。(笑)」
「ははは。まぁ、いいさ。で、何を悩んでいるんだ?」
「お決まりといえば、お決まりの、人間関係さ」
「出たな」
「うん。俺の上司はかなりのやり手で、こんな時期でも売り上げは絶対に落とすなと言う。一方で俺の部下は今どきの若者さ。残業はしたくないし、できればテレワークをさせろと勝手なことを言ってくる」
「要するに、板挟みなわけか?」
「そういうこと」
「俺は幸い上司には恵まれてきたからなぁ。その状況を想定するのが難しいんだけどね。人間関係を良好に保つコツは、最近いろいろ学んでいるぞ」
「マジか! ぜひ、聞かせてくれよ」
「まずは笑顔だ。明るくない奴には、不幸の神様がつきやすいからな」
「なんだ、スピリチュアルの話かよ」
「いや、笑顔は大事だぞ。だけど、もっと重要なことがある。相手に施し、自らは譲るという精神こそ、人間関係を良くする秘訣だよ」
「へぇー、お前が人に譲るなんて想像できないなぁ」
「たしかに、俺は施す方は得意だけど、譲るのは今も苦手。だから、日々修行なわけだ。一方、お前はというと、譲るのは得意中の得意だが、施すのはどうかな?」
「あ、なるほどな」
「お前から上司や部下に何を与えている? 太陽が地上の生物に日の光を与え続けるように、まずお前が何かを施すべきじゃないの?」
「まず俺から与えるのか」
「うん。本当は見返りを求めてはいけないんだけどな。きっとお前が施せば、何かを返してくれるんじゃないかと思う」
「お互いに助け合わないとなぁ」
「そのとおり! 特にお前のもっている時間を惜しげもなく部下のために使うのが一番効果的だと思うよ」
「神坂、ありがとう。やっぱりお前のノー天気なアドバイスをもらうと元気がでるよ」
「今のアドバイスのどこがノー天気なんだよ!!」
「まあまあ、ここは俺がご馳走しますので!」
「お、そういう施しは、エヴリディ・オーケーだぞ!!」
ひとりごと
私たち人間は、太陽の恵みがなければ生きていけません。
親子関係ですら、一方的な関係ではなく、親は子に恵み、子は親に成長する姿をみせてお返しをします。
人間は常に与え、与えられ、助け合っていきていかねばなりません。
そのためには、施す気持ちと譲る気持ちが必要なのではないでしょうか?