今日のことば

【原文】
水火は是れ天地の大用なり。物に憑(よ)りて形を成し、定体有ること無し。近ごろ西洋出す所の奇巧大小の器物を観るに、蓋し皆水火の理を尽くし以て之を製せり。大砲気船の如きも、亦水火の理に外ならざるなり。〔『言志耋録』第245条〕

意訳
水と火は天地の余すところのない働きである。物によって形を変え、定まった形はない。最近西洋製の珍奇で精巧な大小の器物をみると、私が思うには、すべて水と火の理を究めつくして作られている。大砲や蒸気船のようなものも、水と火の理によって製造されていることに変わりはない

一日一斎物語的解釈
世の中にあるもので、水と火を利用して作られていないものはない。まさに水と火は天地の大きな恵みなのだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、定時後、佐藤部長の部屋で『言志四録』について語り合っているようです。

「一斎先生が、水と火は天地の大用だと書いているのは、なるほどなぁと思いました」

「水と火についての一斎先生の言葉は、結構あるよね」

「はい。その中でも『言志耋録』第246条の言葉は面白いなぁと思ったんですよ」

「西洋の器械類はみな水と火の理を尽くして作られているというところかな?」

「そうです。当時の最新の火器といえば大砲でしょうし、水器と呼べる器械といえば蒸気船ですよね」

「なるほど、その通りだね」

「この言葉を読んで、改めて水と火によって、人間は生かされているなぁと感じたんです」

「もちろん、人間だけじゃなくて、すべての生き物がそうだろうね」

「はい。考えてみれば医療機器にも水や火の理が応用されていますよね」

「そうだね。電気メスとかウォータージェット、洗滌装置なんかもあるねぇ」

「いくら内視鏡が優れた医療機器だと言っても、洗滌装置がなければ、ここまで普及しなかったでしょうし、電気メスがなかったら治療はできませんからね」

「だから一斎先生は、水と火が天地の恵みの中でも大きなものだと言っているんだよ」

「しかし、私がこの時間になると自ら連想するのは、やっぱりお酒です。お酒も火がなければ熱燗でいただけませんね」

「ははは、突然話の方向性が変わったなぁ」

「部長、ちょっとだけちさとママのところに寄って帰りませんか?」

「そうしようか。今から行けば18時半には着けるから、30分はお酒がいただけるね」

「考えてみれば、ちさとママは、水と火の理を尽くして、最高の料理を提供してくれていますねぇ」

「では、片付けて社を出ようかね?」

「はい、私も机を片付けてすぐに1階に降ります!」


ひとりごと

水と火の力を借りなければ、現代の人間の生活はまったく機能しません。

しかし、ここまで水と火を活用できているのもまた人間だけです。

天地の大用をいかんなく活用しながら、時に手痛いしっぺ返しをくらいつつ、これからも人間は新しいものを作り続けていくのでしょう。


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