今日のことば
【原文】
「刑罰は世にして軽く世にして重くす」とは、此は是れ呂公経歴の名言なり。時代古今、之を世と謂う。須らく善く活眼を開き以て之を軒輊(けんち)すべし。必ずしも成法に泥まず。〔『言志耋録』第271条〕
【意訳】
『書経』呂刑篇に「刑罰は世にして軽く世にして重くす(刑罰は時世によって軽くしたり重くしたりすることがある)」とあるが、これは周の呂侯が経験から得た至言である。時代や今昔を指して世と呼んでいる。総じてよく活きた眼を開いて刑罰の軽重を定めるべきである。必ずしも既成の成文法にこだわり過ぎてはいけない。
【一日一斎物語的解釈】
規則を適用する目的は、違反者を厳しく罰するためにあるのではない。規則自体も時代や環境に応じて臨機応変に適用すべきである。
今日のストーリー
営業2課の梅田君が遅刻して出社したようです。
「梅ちゃん、また遅刻かよ。カミサマに激烈に起られるぜ。あれ、どうしたのその目の下の隈は?」
「あ、石崎さん。おはようございます。実は、昨日のオペの立ち会いが深夜の2時までかかったんです・・・」
「マジで?! それならフレックスにするって連絡すれば良かったじゃない」
「はい。でも、私は遅刻常習犯なので、ちょっと気が引けて。なんとか朝起きるつもりだったのですが・・・」
「梅田、お前には俺の言葉はまったく通じないのか!!」
神坂課長が梅田君の席にやって来たようです。
「あ、課長。梅ちゃんは昨日夜中の2時までオペの立ち会いをしていたそうです」
「梅田、本当か?」
「はい」
「わかった。では、今日の所は昨日のうちにフレックスの連絡をもらったことにしておくよ」
「え、良いんですか?」
「夜遊びして寝坊した訳じゃない。仕事を遅くまでやった結果だ。当然だよ。次回からは遠慮なくフレックスの連絡をして来いよ!」
「ありがとうございます!!」
「お前たち、このことは浪川のおっさんには内緒だぞ。あのおっさんは、問答無用でルールを適用する輩だからな」
「総務部の浪川さんですね。私も大嫌いです。でも、課長。大丈夫ですか? 昨日のうちに申請が出ていないといって却下されるかも知れませんよ」
「あり得るな。しかし、夜中の2時に電話をもらったんだから、仕方がないだろう」
「ということにするんですね!」
「営業2課全員で規則違反をするんだ。密告する奴はいないだろうなぁ」
「課長、気持ちは皆一緒です。電話があったかどうかは、課長と梅田君しかわからないわけですから」
「着信履歴を調べられたら?」
「そこまでされたらお手上げだ。そのときは、正直に西村部長に直談判に行くさ!」
「神坂課長、皆さん、ありがとうございます」
「梅田、今日は運転に気をつけろよ。そして今日は早く帰るんだぞ。明日遅刻したら、そのときは許さないからな!!」
ひとりごと
規則とは、厳密に守るべきものである一方、杓子定規に適用し過ぎるとかえって法の網の目を潜ろうとする者が現われるものです。
時と場合に応じて、臨機応変に適用すべきです。
なぜなら、法律や規則というのものは、人を罰することが目的ではなく、悪事を未然に防ぐことに本来の目的があるのですから。

