今日のことば
【原文】
凡そ郡官県令たる者は、民に父母たるの職なり。宜しく憫恤(びんじゅつ)を以て先と為し公平を以て要と為すべし。委曲詳細に至りては、則ち之を属吏に付して可なり。故に又属吏を精選するを以て先務と為す。〔『言志耋録』第273条〕
【意訳】
総じて郡や県の長官である者は、民に対して父母のように接する職分にある。憐れみ恵むことを優先して公平に対処することが肝要である。細かい具体的な事項については、部下の官吏に任せてもよい。したがって、どういう部下を登用するかが重要な任務でもある。
【一日一斎物語的解釈】
企業のトップは、社員を自分の子供のように慈しむべきである。我が子に優劣をつけないように、部下に対しても公平に対処すべきだ。注目すべき点は、どんな仕事に活用できるかを見極めることである。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、社長室に呼ばれているようです。
「神坂、久しぶりだな」
「平社長、俺、何かやりましたか?」
「お前はいつまでそういうくだらないことを言ってるんだ」
「だって、社長が俺を呼ぶときは、大概お小言だったじゃないですか」
「お前が起こすトラブルは、他の社員さんとはレベルが違ったからな。俺が出て行って諭すしかなかったんだよ。しかし、それは過去の話だろう?」
「はい、私も私なりに少しは成長しているかと・・・」
「ははは、心配するな。ちゃんと成長しているよ!」
「本当ですか? ありがとうございます」
「俺はいつだって、お前を我が子だと思って指導しているんだ」
「はい、ひしひしと感じていますよ。時々は親父より怖いなと思う時もありますけどね」
「同じことをお前の部下も思っているだろうよ」
「そうですかね? 父親のように感じてもらえているかは不安です」
「佐藤が言うには、お前は本当に誰に対しても分け隔てなく叱り、分け隔てなく励ましていると聞いているよ」
「佐藤部長が?」
「お前の成長が嬉しいと言ってたぞ」
「やばい、泣きそう」
「それもこれも佐藤の辛抱強い教育の賜物だな」
「はい。社長が父親なら、佐藤部長は少し年の離れた兄みたいな存在です。本気で叱ってくれたし、一緒に喜んでくれる人です。私の身近にいる中では最も仁者に近い人だと思います」
「仁者か、そうかもな。しかし、いつまでも弟でいてもらっては困るぞ。お前には、もう少し大きい仕事をしてもらいたいからな」
「大きい仕事?」
「そのうちに任せるときが来るだろう。そのためにも、お前の今のポストを任せられる人材を見つけておけよ!」
「は、はい・・・」
ひとりごと