今日のことば
【原文】
親民の職は尤も宜しく恒有る者を択ぶべし。若し才有って徳無くんば、必ず醇俗(じゅんぞく)を敗らん。後に善有りと雖も、而も之を反すこと能わず。〔『言志耋録』第275条〕
【意訳】
部下である社員さんをマネジメントするポジションには、常に道を守ってぶれない軸を持っている人間を登用すべきである。もしも、才能があっても徳のない者を当てれば、必ず人情味のある良い風俗を壊すことになるであろう。その後に立派な人間を用いても、そう簡単に組織は元にはもどらないものだ。
【一日一斎物語的解釈】
人の上に立つ人間を選ぶ際には、才より徳のある人を優先すべきである。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、大累課長とランチ中のようです。
「昨日、社長に呼ばれてさ。自分の後を継ぐ人間を育てろって言われたんだ」
「もしかして神坂さん、部長になるんですか?」
「ならねぇだろ。そんな話は聞いたこともないぜ」
「でも、社長の言葉の意味はそういうことじゃないですか?」
「佐藤部長がいるんだぞ」
「部長は更に上に行くんじゃないですか」
「そういうことなのかなぁ」
「凄いじゃないですか!」
「おいおい、勝手に判断するのはやめてくれよ。違ったら、めっちゃ恥ずかしいじゃないか」
「たしかに。それはそれで笑えますけどね」
「本当にお前は性格がねじ曲がってるよな。昔の偉人はよくこう言っている。人の上に立つ人間には、才能のある人間よりも徳の高い人間を選べって。そういう意味じゃ、お前は絶対に無理だな」
「いや、あなたに言われたくないですよ。神坂さん、自分で自分のことを徳のある人間だと思います?」
「全然思わない・・・」
「ですよね!」
「やかまわしいわ! しかし、実際に自分の後をだれに任せるかというと難しいぞ。年齢的には山田さんだけど、あの人にマネジメントができるかどうか?」
「人が良すぎますからね」
「その次は、本田君だからな」
「清水はどうですか? 新美の下にいつまでも置いておくのもどうかなと思いませんか?」
「なるほど。しかし、あいつはお前や俺以上に徳がないぞ」
「全くその通りです!(笑)」
「いずれにしても、営業成績だけで選ぶのはウチの社風ではないな。お前だって、自分の後をだれにやらせるか考えておいた方がいいぞ」
「考えたこともなかったなぁ。特販課は少人数部隊ですからね。俺の下となると雑賀ですよ。あいつが課長になるなんて、今は想像できません」
「俺も。(笑) しかし、俺たちもそういうことを考えないといけない年齢になってきたのかなぁ」
「いつの間にか40歳を超えてしまいましたからねぇ。おっさんになりましたよね」
「うん。しかし、まだまだ老け込んでいる場合じゃないな。後継者ということも意識しながら、もう少し第一線を突っ走りたいよな!」
ひとりごと
人の上に立つ役職に就けば、いつかはそれを後進に譲る時がきます。
どうせならば、自分で育てた後輩に引き継ぐことができたら嬉しいことですよね。
その際には、才と徳のバランスをよく考えて、長所を伸ばしつつ、欠点を矯正するような指導をしておくべきです。
いつまでも自分がやるんだ、などと思っていたら、後継者育成を怠ることとなり、結果的に組織の将来に暗雲を立ち込めさせることになってしまうかも知れません。