今日のことば

【原文】
凡そ大都を治(おさむ)る者は、宜しく其の土俗人気を知るを以て先と為すべし。之が民たる者は、必ず新尹(しんいん)の好悪を覗(うかが)う。人をして覗わざらしめんと欲すれば、則ち倍々(ますます)之を覗う。故に当に人をして早く其の好悪を知らしむべし。卻って好し。何の好悪か之れ可と為す。孤寡(こか)を恤(あわれ)み、忠良を愛し、奢侈を禁じ、強梗(きょうこう)を折(くじ)く。是(これ)を可と為す。〔『言志耋録』第276条〕

【意訳】
大きな会社や組織をマネジメントする者は、そこに所属するメンバーの習慣や気質をしっかりと把握することをまず優先すべきである。メンバーは必ず新任マネジャーの良し悪しを確かめようとするものだ。それを見せまいとすれば、余計にそれを探ろうとするだろう。したがって、まず自分の価値観をしっかりとインプットすべきである。その方がかえって良い結果を生むのだ。では、どんな価値観が良いのか? ベテラン社員さんを大切にし、上司に忠実で善良なメンバーを可愛がり、コストダウンを図り、力づくで反抗するようなメンバーには厳しく指導をするといったことであろう。これらが良い価値観だと言えよう

一日一斎物語的解釈
大きな組織のマネージャーは、メンバーをよく理解しつつ、自分自身をも積極的に開示していくと良い。その際には、損得よりも善悪を重視する価値観をメンバーと共有することができれば理想的である。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、読書会で知り合った大手上場企業の部長・杉森さんと食事をしているようです。

「杉森さんの部下は何名いらっしゃるんですか?」

「派遣社員さんも含めると、100名は超えるかなぁ」

「100名ですか?! ウチの全社員より多いじゃないですか!」

「ですから、さすがに1対1のマネジメントはできませんよ。中間管理職の人たちを介してのマネジメントになります」

「それはそうでしょうね。でも、直接ではなく、間接的にマネジメントするということが、私には想像できないですねぇ」

「まずは、中間管理職の人たちと価値観を共有することが重要だと思っています。ですから、毎週マネージャーを集めて30分程度のミーティングを開き、私が気になった点を話し合ったり、仕入れた情報をお互いに共有するようにしています」

「大きな会社はすごいなぁ。規模が違いますねぇ」

「でも、神坂さん。結局やるべきことは一緒ですよ」

「そうですか?」

「はい。お互いに共有のモノサシで物事が判断できるような組織にするという点ではね」

「共有のモノサシですか?」

「そうです。たとえば、短期的な視点より長期的な視野をもつこと。損得よりも善悪を優先すること。会社の売上よりもお客様の課題解決を優先すること。この3つは、常に言い続けています」

「勉強になります」

「価値観の共有と共に大切にしているのは、お互いを知ることですね。今は飲みニケーションなんて言葉は死語になりつつあります。ですから、メールや社内報などを使って、なるべく自分を知ってもらうような情報を発信していますよ」

「100名もいたら、顔を覚えるのも大変ですよね」

「そこも意識しています。『おい、君』なんて呼んでいたら、信頼関係なんて築けませんよね。名前を、できればフルネームで覚えることも意識していますよ」

「やはり、大企業のマネージャーはレベルが違います。中小企業でよかった。(笑)」

「ははは。やらざるを得ないとなればやれるものですよ。神坂さんくらい情熱がある方なら、きっと大丈夫!!」

「うまいなぁ。そうやって、部下の気持ちをサッと高めていくんでしょうね。4~5人の部下を持っただけで、悲鳴を上げているようじゃ駄目だな。最後に杉森さんの爪の垢をいただいて煎じて飲もうかな。(笑)」


ひとりごと

部下と信頼関係を築きたいのなら、まずは自分から情報開示をすべきですね。

こちらのことは何も語らずに、部下の情報だけを引き出そうとしても、思い通りにはならないもの。

積極的に情報を発信しつつ、信頼関係を高め、共通のモノサシを基準に物事を判断できる組織が作れたら、強い組織となることは疑いようがないでしょう。


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