今日のことば

【原文】
教えて之を化するは、化及び難きなり。化して之を教うるは、教入り易きなり。〔『言志耋録』第277条〕

【意訳】
人を教育する際には、指導した後にやる気を起させることは非常に難しいが、先に自発的に行動するスイッチを入れてから指導をすると容易に成長するものである

一日一斎物語的解釈
奮発心を喚起することこそ、教育の基本である。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、高校時代の野球部監督で恩師の杉田先生とオンラインで話をしているようです。

「ははは。そんなこともありましたねぇ。でも、先生。俺みたいなひねくれ者は育てるのが難しかったんじゃないですか?」

「お前みたいな単細胞を教えるのには何の苦労もなかったよ」

「相変わらず酷いことを言いますねぇ。俺を指導するときはどういう考え方でやられていたのですか?」

「お前は最初に理論を教えても、まったく理解できなかったからな。とにかくやる気のスイッチを入れることだけ考えていたな」

「やる気のスイッチですか? たとえば、どんなことを覚えていますか?」

「お前は清原の大ファンだっただろう。だから清原がどういう練習をしているかを調べておいて、『これから教える練習メニューは清原がやっているメニューだ』と云えば、それでバッチリさ。それを聴いた瞬間にお前の目がキラッと輝くんだよ。(笑)」

「俺って、そんなに単純でしたか?」

「俺も長らく教師をしてきたから、相当数の生徒を指導してきたが、お前以上に単純な奴にはお目にかかったことがないなぁ」

「単純とは、言い換えれば素直ということですよね。俺ほど素直な生徒はいなかったと理解しておきます」

「そのノー天気なポジティブさには、恐れ入るよ。しかし、お前に出逢ったお陰で、俺も勉強になった」

「どういうことですか?」

「そうやって、やる気のスイッチを入れれば、生徒は自分から学ぶものだということを教えられたんだよ」

「そういうことですか。じゃあ、俺も先生のお役に立ててわけですね」

「そうだな。私の尊敬する東井義雄先生のことばに、『根を養えば、樹はおのずから育つ』というのがある。やる気のスイッチを入れるというのは、根っこに水をやることと同じなんだよ」

「なるほど。俺も今や部下を持つ身になりました。部下のやる気のスイッチを入れることを意識してみます」

「うん。それは良いことだ。ただし、それは簡単ではないぞ」

「え?」

「今どきの若者は、お前みたいに単純じゃないからな。スイッチを入れるのには相当苦労するってことだよ」

「杉田先生!!」


ひとりごと

東井義雄先生の至言、「根を養えば、樹はおのずから育つ」は、教育の真髄を語り尽くしている言葉だと思います。

植物を育てる時に、茎や葉に水をあげたり、あるいは茎や葉を引っ張って成長させようとすれば、人に笑われます。

しかし、人を育てることになると、なぜか根に水をやることをせずに、葉を引っ張ろうとしている人が多いのではないでしょうか?

やる気のスイッチを探すことこそ、人の上に立つ人のもっとも大事な役割なのです。


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