今日のことば

【原文】
色の清き者は観る可く、声の清き者は聴く可く、水の清き者は漱(くちすす)ぐ可く、風の清き者は当たる可く、味の清き者は嗜む可く、臭(におい)の清き者は嗅ぐ可し。凡そ清き者は皆以て吾が心を洗うに足る。〔『言志耋録』第282条〕

【意訳】
清らかな色彩を鑑賞し、清らかな音を聴き、清らかな水を飲んで口を潤し、清らかな風に触れて、清らかな食事を楽しみ、清らかな香りを嗅ぐのは、とても良いことである。このように、総じて清らかなものは、われわれの心を洗い清めるに足るものだ。

一日一斎物語的解釈
清らかなものを五感で感じると心が洗われる思いがするものだ。


今日のストーリー

「やっぱりちさとママのお料理は最高だなぁ!」

「はい。ここのお店は本当にお料理がおしいですよね!」

今日の神坂課長は、Y社の菊池さんと「季節の料理 ちさと」に来たようです。

「ママの料理には透明感があるだろう。なにか清らかなものを胃袋に入れる感じがするよな」

「はい。体が喜んでいます」

「それに見た目、香りにもこだわりがあるからね。食べ方を間違えると一々叱られるのが面倒なんだけどさ。(笑)」

「叱られてみたい!」

「菊池君、Mなの? まぁ、いいや。そして、ここで出すお酒。これがまた絶品なんだよ。いろんな地方のあまり知られていない日本酒を出してくれるんだ。他の店じゃ、そうそう飲めないぜ」

「これ日本酒ですよね? めちゃくちゃ飲みやすいし、クセがないですね」

「これは俺が大好きな熊本の日本酒で『泰斗』っていう銘柄だよ。米の透明感を感じるでしょう。まさに清酒って感じの清らかさを感じて、心まで奇麗になる気がする逸品だよ」

「やっぱりこのお店は最高だなぁ」

「一人でも来ればいいじゃん!」

「ママとしゃべるのが緊張するので、神坂さんが居てくれないと不安なんです」

「ははは。菊池君は意外とうぶなんだな」

「でも、本当に五感を楽しませて頂けるお店ですよね」

「なるほど、五感を楽しませる店か。たしかにそうかもな!」

「どうしたの、神坂君。あなたがそんなに褒めるなんて、きっと何か裏があるんでしょ?」

「菊池君、問題は店主の心がちょっと汚れていることなんだよなぁ」

「か、神坂さん!! そ、そんなことないですよ。ちさとママは絶対心も綺麗だと思います」

「じゃあ、一回抱かせてもらえば?」

「か、神坂さ~ん!!」

「菊池君、耳たぶが真っ赤だよ」

「神坂! そうやって後輩をいじめるんじゃないの! だいたい、私が誰とでも寝る女みたいな言い方をしないでよ!」

「そうですよ、神坂さん!」

「じゃあ、ママが『抱いてって言ってきても、菊池君は断るんだな?」

「それは、その、あの・・・」

「ははは。どうやら一番心が清らかなのは、菊池君みたいだな。(笑)」


ひとりごと

五感で清らかなものを感じると、心が洗われる、という表現は楽しいですね。

小生は、お線香が好きで、京都に行くとちょっとお高いお線香を買ってきて、時々部屋で炊いています。

とても良い香りが広がって、心が落ち着くのを感じるものです。

自分の心を洗ってくれる香りや、景色や料理やお酒を持っておくことは、人生においてとても大事なことかも知れません。


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