今日のことば

【原文】
「其の志を持して、其の気を暴(そこな)うこと無かれ」と。此の訓(おしえ)は養生に於いても亦益有り。〔『言志耋録』第313条〕

意訳
『孟子』のことばに「その意志を堅持して、感情を乱してはならない」とある。この教訓は、養生においても有益な言葉である

一日一斎物語的解釈
堅く志を維持すれば、容易に心が乱れることはない。心が乱れなければ、体調を崩すこともないであろう。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、デスクで新聞を読んでいるようです。

「また自殺者が増えてきたみたいだなぁ。コロナ鬱とか言うらしいけど、そんな簡単に命を捨てないで欲しいよ」

「そうですね。生きたくても生きられない人がいます。健康な人が命を落とすなんてもったいないですよね」

山田さんが話に乗ったようです。

「臓器移植はできても、命の移植はできないからね」

「本当ですね」

「やっぱり生きていくには、軸みたいなものが必要だよね」

「軸ですか?」

「うん。カッコいい言葉で言えば、志ってやつかな。自分はこれで身を立てるんだ、という確固たるものがあれば、簡単に心は乱れないと思うんだよ」

「課長の志はしっかり固まっているんですか?」

「うっ、そうストレートに突っ込まれるとひるんじゃうけどさ。世の中から癌で死ぬ人を一人でも少なくしたい。そのために、医療機関のお手伝いをする、というのが俺の使命だとは思っているんだ。山田さんはどう?」

「私は医療器械屋であると共に、実家がお寺なので、僧籍も持っています。どちらも大きく考えれば、人の命に係わる仕事だと思うんです。ですから、医療器械の販売を通して、ドクターやメディカル・スタッフの方にも命の尊さを伝えていきたいと思っています」

「立派な志だねぇ。そういう気持ちがあれば、コロナで少しくらい苦しい状況に陥っても、なんとか乗り越えられると思うんだけど、違うのかな?」

「世の中では、『健全な精神は健全な肉体に宿る』と言います。でも、本当は健全な精神があってこそ、健全な身体ができあがる気がしますね」

「なるほどね。うん、絶対そう思うよ。志を持てば、迷わなくなる。そうすれば、ストレスも減って、身体も健康になるんだろうね」

「はい。私はそう思います。そこに仏教が果す役割はとても大きいと思っています」

「うん。仏教もそうだし、俺が勉強している儒学もそうかも知れないな」

「そうですね」

「孔子は十五にして学に志したんだ。そこで軸が定まった。だから、その後の人生は紆余曲折があったにも関わらず、当時としては長寿とされる74歳まで生きているからね」

「では、私たちはしっかりした志があるから、長生きできそうですね」

「いや、俺の志はまだブレてる気がする。もっと勉強して、もっと仕事をして、しっかり定めていくよ」

「私もそうします!」


ひとりごと

どれだけ健康な身体を持っていても、精神が病んでしまえば、それを活かすことができません。

逆に健全な精神が宿っていれば、少しくらい身体が不自由でも、やれることがたくさんあるはずです。

健全な精神を保つためには、志が必要だと、一斎先生は言います。

やはり、まずは立志が重要だということでしょう。


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