今日のことば

【原文】
老人の養生を忘れざるは固より可なり。然れども已甚(はなはだ)しきに至れば、則ち人欲を免れず。労す可きには則ち労し、苦しむ可きには則ち苦しみ、一息尚お存せば人道を愆(あやま)ること勿れ。乃ち是れ人の天に事えるの道にして、天の人を助くるの理なり。養生の正路は蓋し此に在り。〔『言志耋録』第319条〕

意訳
老人が養生することを忘れないのは良いことである。しかし、あまり過度に養生することになると、かえって私欲を免れなくなる。骨を折るべきときには骨を折って働き、苦しむべきときは素直に苦しみ、息が続く間は人の道を踏み外さないようにすべきである。これこそが人間が天に仕える道であって、天が人間を助ける道理である。養生における正しい道は、ここにあるものだと思う

一日一斎物語的解釈
人間は幾歳になっても、楽をし過ぎてはいけない。自然の摂理に身を任せることこそ最大の養生なのだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、オンライン読書会終了後に元経営者の松本さん(愛称:フミさん)とzoomで会話をしているようです。

「その後、ドリームハウス・23(フミ)はいかがですか?」

「それがね、新聞に掲載されたお陰なのか、毎日訪問者が絶えないんだ」

「すごいですね。では、奥様もパン作りが大変ですね」

「いやいや、喜んで作ってるよ。皆さん、おいしいと言ってくれるのが嬉しいみたいだね」

「どんな方が来られるのですか?」

「過去に癌を煩ったり、もしくは今も闘病中という人が多いね。そういう人がお友達を連れて来てくれるんだ」

「きっと病気に対する不安を解消したくて、やって来るんでしょうね?」

「癌で苦しんでいるのは自分一人じゃないということを知るだけで、すごく安心するみたいだね」

「フミさん、すごいなぁ。十分に稼いだ人なんだから、あとはゆっくりすれば良いのに!」

「いや、ゴッド。人間は楽をするとロクなことがないんだよ。幾つになっても、楽しむべきときは大いに笑い、悲しい時は大いに悲しむ。つねにあるがままを受け容れて、ありのままに生きることこそ、人の生きる道だと思うよ」

「フミさん、ゴッドは私じゃなくて、フミさんですよ。今日は一段と神々しく見えてきました」

「ははは。勘弁してよ。私はおだてられるとすぐに木に登ってしまうんだから!」

「自ら試練を作って、それを乗り越えていく。私はフミさんのような生き方はできないですよ!」

「そんなことはないよ。ゴッドだって、辛いことを乗り越えた時の喜びを感じたことはあるでしょ?」

「まぁ、そうですね」

「もし、その辛いことから逃げていたら、その後の喜びを感じることはできなかった訳だよね。人生って、逃げるよりぶつかっていく方が得るものが多いんじゃないかな?

「それが自然の摂理に沿って生きるってことなんですね?」

「うん、そう思う。私も70歳を過ぎてようやく自分の思い通りに事が運ぶようになってきた。今が一番楽しいよ!」

「すごい!! 孔子は、七十歳になって、己の欲するところに従っても矩を越えなくなった、と言っています。まさにその境地ですよね?」

「あれ、じゃあ私は孔子に追いついたのかな?」

「孔子に肩を並べましたね!」

「やめてよ。まじめに『論語』を勉強している人から怒られるよ」

「いや、フミさん。俺は今、心から感動しています。これからもご指導よろしくお願いします」

「やれやれ。(笑)」


ひとりごと

人間は幾つになっても、楽をし過ぎない方が良い、と一斎先生は言います。

辛いことや苦しいことを経験して、ありのままに生きていくことこそ、人の生きる道だと。

結局、人間は死ぬまで試練や逆境と対峙していくしかないようです。

そうとわかれば、腹を決めて、そこから逃げない生き方をするしかありません!!


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