今日のことば

【原文】
清忙(せいぼう)は養を成す。過閑(かかん)は養に非ず。〔『言志耋録』第322条〕

【意訳】
心清らかな忙しさは養生になる。逆に、あまりにも暇すぎると養生にはよろしくない

【一日一斎物語的解釈】
適度に忙しいことは、あまりにも暇過ぎるよりも、心身の養生となるものだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、読書会で知り合った江守さんにプライベートの名刺作成を頼んだようです。

「江守さん、仕事が早いねぇ。頼んでから3日しか経ってないよ」

「名刺はスピードを求める方が多いですからね。それに今、ウチみたいな印刷業は仕事が無くて暇なんですよ」

「コロナの影響?」

「はい。ウチの会社は今、出勤を週二日に制限されています」

「あー、補助金申請のためか」

「おっしゃるとおりです」

「会社に行かないときは何をやっているの?」

「リモートで仕事はしていますが、そもそも仕事も少ないので、自分で個人のデザインとか制作の依頼を受けたりもしています」

「死ぬほど忙しいのも辛いけど、暇過ぎるのも辛いよね?」

「正直に言って、暇過ぎる方が辛いですね。鬱になるという人の気持ちがわかりますよ」

「やっぱりそうなんだね。じゃあ、この名刺も個人で受けた仕事なの?」

「いや、これは印刷も発生するので、会社としての仕事です。デザインだけの場合は、自分の名義でやることが多いですね」

「会社を作ってるの?」

「はい。これは今の勤務先にもちゃんと話をして、いわゆる副業として会社を作っています」

「そういう時代になってきたんだね」

「いまは、「副」業ではなく、複数の仕事という意味で、「複業」という考え方があるようです」

「なるほど、つまり本業と副業という位置づけではなく、どれも本業という認識なんだね?」

「そうみたいです。プライベートの名刺を作るということは、神坂さんもお暇なんですか?

「暇ではないけど、忙しくもないかな。俺の名刺はあくまでも遊びだよ。友人に配るためのね!」

「『古典活学人(こてんかつがくびと)』って、カッコいいじゃないですか?」

「いやいや、それほど古典に詳しいわけじゃないんだけどね。将来は読書会とかを開催してみたいと思ってるんだ」

「古典の学びを仕事に活かす読書会ですか?」

「うん。俺の元同僚がそんな会をやっていて、すごく面白くて勉強になるんだよ」

「もし、神坂さんが読書会を始めるなら、教えてくだしさいね。ぜったいに参加しますから!」

「ほんと? それは俄然やる気がでるな!!」


ひとりごと

小生が新入社員だった頃はいわゆるバブル絶頂期でした。

小生は、文系にも関わらず理系職場に配属され、配属先も小生をどう扱っていいのか苦労しているようでした。

となりの職場は開発部門でしたが、そこの同期は深夜まで残業をしているのに、小生は毎日定時で上がり、寮の一番風呂に入っているような日々でした。

その時に味わった暇の辛さは今でも忘れません。

その後に自分自身で手を挙げて営業部門に転籍させてもらってからは、忙しいことが嬉しくて、毎日遅くまで働きました。

そして、毎日忙しい状況の方が、暇過ぎる状況よりも、はるかに心身共に健全であった気がします。

そういう意味では、働き方改革で働きたい人まで残業が制限される時代が本当に良いのかどうか、考えさせられます。


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