今日のことば

【原文】
志有るの士は利刃(りじん)の如し。百邪辟易す。志無きの人は鈍刀の如し。童蒙も侮(ぶがん)す。〔『言志録』第33条〕

【意訳】
志が立っている人は、まるでよく切れる刀のように、多くの邪悪なものを退ける。一方、志のまだ立っていない人は、あたかも切れない刀のようで、子供たちにさえ馬鹿にされてしまう。

【一日一斎物語的解釈
志が立てば、邪な人間は寄りつかなくなるが、志が立っていなければ、子供にすら馬鹿にされるであろう。


今日のストーリー

今日の神坂課長は出社して新聞を読んでいるようです。

「ワクチン接種代行詐欺か。どうしてこんな単純な詐欺に引っかかるのかなぁ」

「また新手の詐欺ですか? 悪い奴というのは、よくも次から次へと新しい詐欺のネタを見つけ出しますね」

本田さんが応対したようです。

「いや、まったくだよ。そして、かならず引っかかっちゃう人がいるんだよなぁ」

「詐欺師というのは、微妙な人の欲望に付け込むのが上手ですよねぇ」

「やっぱり自分だけ得をしたいといった利己的な気持ちがあると引っかかりやすいよね」

「そうですね。投資系の詐欺は、欲に目がくらんだ人がターゲットですから」

「真っ当な商売をして、適正な利益を得るという堅実な経済活動を粛々とやるのが一番賢いのにね」

「といいながら、課長もギャンブルをやられているじゃないですか」

「ははは。ギャンブルは趣味だよ。あれでひと財産作ろうなんて考えていないよ」

「そうですか、お金がもったいないと思ってしまいますけど・・・」

「本田君はゴルフには結構お金を使っているでしょ。あれと同じだよ。君の場合はゴルフで解放感や達成感を味わうのが目的だろ? まさかプロになるつもりはないだろうから」

「もちろんです。できればシングルまでは行きたいと思っていますけどね」

「シングルか、高い目標でいいね。俺の場合は、ギャンブルで勝馬を推理する楽しさや馬券が的中するかどうかのスリルを味わっているんだよ。馬券購入は、いわばゴルフ場に支払うプレイ代みたいなものさ」

「なるほど」

「競馬場にも裏情報を仕入れたから特別に教えるとか言って、馬券を買わせて、当たったら分け前を貰う奴らがいるんだよ」

「外れたらどうなるんですか?」

「いつのまにかドロンさ」

「悪質ですね」

「しかし、一斎先生が言うには、志が立っていれば、そういう悪い奴らは寄りつかないらしい。逆に、志が立っていないと、ガキにも馬鹿にされると言っている」

「志ですか?」

「うん、要するに、世の中のお役に立つ仕事をして、適正な報酬をもらうという覚悟だよね。そういう気持ちがあれば、あぶく銭に目がくらむこともない」

「はい、目の前の仕事に励むことにします。では、行ってきます!」

「いってらっしゃい!」


ひとりごと 

一攫千金などという言葉を鵜呑みにしたり、信じたりすれば、ロクな結果にはなりません。

やはり、お金というものは、コツコツと働いて稼ぐものなのでしょう。

人より先にとか、人より多くといった「我」を捨てて、自分を後にする気持ちを大切にしましょう。


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