今日のことば

原文】
得意の時候は、最も当に退歩の工夫を著(つ)くべし。一時一事も亦亢竜有り。〔『言志録』第44条〕

【意訳】
自分の望み通りになった時こそ、一歩後退する配慮がなければならない。万事において、高く昇りつめた竜は、必ず衰退を悔いるときがくるものだ。

【一日一斎物語的解釈】
好調の時こそ、その後に訪れる退歩のことを考えておく必要がある。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、ご機嫌ナナメなようです。

「まったく最近のジャイアンツは、終盤に追いつかれて逆転負けとか引き分けという試合ばかりだ。フラストレーションがたまりまくるよ!」

「でも、セ・リーグ首位の阪神も交流戦に入ってからは伸び悩んでいますから、それほどゲーム差が開いていませんよね」

「本田君、そうなんだよ。それが救いというか、なんというか。幸い交流戦で好調なのはセの下位チームだからね」

「セ・リーグ2位のまま前半を折り返せば、十分チャンスがあるんじゃないですか?」

「うん、ただしそこまでには戦力を整えて欲しいよ。坂本、梶谷が帰ってこないと打線につながりが出ないからねぇ」

「投手陣は、菅野にメルセデスが加わりましたから、やはり後は終盤のリリーフ陣ですかね?」

「間違いなくそこだよ。山口俊がメジャーを断念して帰国したらしいから、彼を取って後ろで使ってほしいな」

「そうなると心強いですね」

「タイガースもここのところ優勝からは遠ざかっているし、若い選手の多いチームだから、後半になればプレッシャーで連敗ということもあり得るからね」

「5ゲーム差以内なら、勝負になりそうですね」

「今のタイガースは投打が見事にかみ合って絶好調だ。しかし、長いシーズンだ。このまま行くとは思わない。新人の佐藤にもスランプがくるだろう」

「そこが狙い目ということですね」

「そう信じたい。矢野監督が後半の失速をどれだけ見越して先手を打つかだろうな。しかし監督としての優勝経験のない彼にそれができるかどうか?」

「一方のジャイアンツは、名将原監督ですからね」

「原監督は現有戦力をよく分析して、予想外の配置転換やトレードを使って見事に後半までには戦える布陣を築き上げるからね」

「すごいですね」

「若手には常に競争意識を持たせて力をつけさせるし、ここという時には奇襲戦法も使う。変幻自在の監督だからな。マネージャーとしても勉強になるよ」

「なるほど」

「ということは、後半は矢野監督と原監督のマネジメントの差がどう出るかですね?」

「うん、矢野監督はいかに好調を維持するか、原監督はいかに戦況を整えるか。そこが見どころだね」

「はい」

「しかし本田君は、さすがだなぁ」

「え、何がですか?」

「上手に俺の機嫌を直しちゃったもんな。で、相談事は何?」

「ははは、バレましたか。では、ひとつ相談を聴いてください・・・」


ひとりごと 

天に昇りつめた龍は、いつかは下り始めます。

転落し始めてから、調子に乗り過ぎたことを後悔しても、もう遅いのです。

それが、『易経』にいう、「亢龍悔いあり」なのです。

幸福の裏側には密かに不幸が忍び寄っており、不幸の裏側では幸福の芽が芽生え始めているものです。

常に裏側を意識して日々を過ごしたいものです。


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