今日のことば
【原文】
酒は穀気の精なり。微(すこ)しく飲めば以て生を養う可し。過飲して狂酗(きょうく)に至るは、是れ薬に因って病を発するなり。人葠(にんじん)・附子(ぶす)、巴豆(はず)、大黄(だいおう)の類の如きも、多く之を服すれば、必ず瞑眩(めいげん)を致す。酒を飲んで発狂するも亦猶此(かく)のごとし。〔『言志録』第54条〕
【意訳】
酒は適量飲めば、むしろ生を養うが、度を超えると取り乱すことになる。生薬もこれと同じであって、多量に服用すればかえって病気になってしまう。体に良いからといって適量を超えて摂取することは慎まねばならない。
【一日一斎物語的解釈】
酒も薬も適量を接種するなら身体に良いが、過度に摂取すれば、かえって身体に支障をきたす。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、「季節の料理 ちさと」に来ているようです。
「ママ、ようやくお酒が出せそうだね」
「うん、19時までだけど、やっぱりお酒が出せるかどうかはとっても重要なの」
「そうだよね。ママの料理はお酒にピッタリだもんなぁ」
「でも、今日はまだダメよ。21日からだから」
「わかってるよ。でも、ようやくここでお酒が飲めると思ったら、つい足が向いちゃったんだ」
「ありがとうね、神坂君。いつも気にしてくれて」
「ここは俺のサード・プレイスだからね。家庭と職場の次に大事な場所なんだ」
「うれしいわ」
「あれ、ママ、泣いてるの?」
「最近ずっとこんな状況で辛かったから、神坂君のやさしさにホロっときちゃった」
「惚れた?」
「いや、惚れてはいない」
「ちっ、なんだよ!」
「神坂君、なんだか顔色が良いわね」
「たぶん、酒を飲まなくなったからかも。俺は適量を飲むということが出来ないからさぁ。酒を飲むと二日酔い。そして翌日は迎え酒と酒浸りの生活になりがちだったけど、最近は家でも飲んでないんだよね」
「お酒とお薬は、適量を取らないと、かえって身体に悪いものになるもんね。いっそ、お酒をやめたら?」
「何言ってるんだよ。仕事の後の一杯があるから、頑張れるんじゃない。それに、酒をやめたらここにも来なくなるよ」
「なんで? お料理だけでも食べにくればいいじゃない?」
「さっきも言ったよね。ママの料理は、お酒にピッタリなの。逆に言えば、酒が飲めないなら、食べちゃいけない料理なんだ」
「あら、ウチには飲めないお客様も来るのよ。あ、そうだ、今日は岩手産の天然のホヤが入ったの。ホヤは好きだよね?」
「大好きだよ。刺身で食べたい!!」
「もちろん、新鮮なホヤなのでお刺身でどうぞ」
「うわぁ、綺麗な色だねぇ。どれどれ。うん、旨い。磯の香りが口の中一杯に広がるよ」
「もう一杯飲む?」
「うん、悔しいけど、ノンアルのビールをお替り!!」
「〆にはホヤの炊き込みご飯もあるわよ」
「マジで? ノンアルって飲み過ぎるとどうなるんだろう?」
ひとりごと
酒は百薬の長と言われます。
しかし、良い薬も服用量を誤れば身体に悪影響を与えるように、お酒も飲み過ぎれば身体をむしばみます。
ただ、これだけコロナ禍が長引いて、飲食店さんが大変な状況だと聞くと、お酒を飲めない小生でさえ、お酒を飲んであげたくなります。
頑張れ、庶民の飲食店!!