今日のことば

原文】
人は須らく地道を守るべし。地道は敬に在り。順にして天に承くるのみ。〔『言志録』第94条〕

【意訳】
人は地道を守っていくべきである。地道は謙(卑下)の徳をもっていて、人を尊び己を慎むという敬を意味する。すなわち、人は柔順に天に従っていくのである

【一日一斎物語的解釈】
すべてのビジネスはお客様を喜ばせるためにある。そのために必要なことはお客様を敬い、自らを慎むことだ。謙虚であれば、仕事の神様に受け容れられるはずだ


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業2課の梅田君と面談中のようです。

「お前、あんな温和な先生を怒らせるなんて、相当のことをやったんだろうな!」

「それが、私は亀井先生が何で怒っているのか、まったく見当がつかないんです・・・」

「そんなわけないだろう!」

「そう言われましても・・・」

「どんなやり取りをしたんだ?」

「亀井先生のご希望の商品は、先生のご施設にはオーバースペックだという話をしました」

「なるほど。それで?」

「先生は、『自分が欲しいと言っているのだから、良いじゃないかと言われたのですが、私は『先生に最適の商品は絶対にその商品ではありませんと答えたんです」

「それから?」

「そうしたら、『もう帰ってくれ』と言われて、最後に『もう君の顔は見たくない』と言われたんです」

「あちゃー、出禁ってやつだな」

「そうだと思いました。それで、亀井先生にお声を掛けたのですが、もう振り向きもせずに奥に入っていかれたんです」

「でも、だいたい分かったぞ」

「え、本当ですか?」

「お前にはお客様に対する敬意が不足しているんだな。お客様に対して謙虚さを失ったら、そういうことになるんだよ」

「でも、課長は以前に、お客様と対等のパートナーになれと仰ったじゃないですか!」

「それはその通りさ」

「訳が分かりません!」

「対等とは言っても、俺たち営業マンはお客様に商品を買ってもらう立場だ。だからお客様に対しては常に謙虚でいなければいけないんだよ。謙虚でいるためには、お客様に対して常に敬意を持っていないとな」

「下手に出たら対等でなくなりませんか?」

「俺が言う対等というのは、上からものを言うなとか、下手に出るなとか、そういうことじゃないんだよ」

「・・・」

「お客様が課題を解決する手段として商品を選ぶ際に、頼りにされるアドバイザーになれ、という意味だ」

「そういう意味だったんですか・・・」

「お前は、最後に商品を押しつけてしまった。それじゃ、押し売りと一緒だよ。自分の意見はハッキリ言うべきだが、選ぶのはお客様であることを忘れてはいけないぞ」

「はい。たしかに、押し売りと言われても仕方がなかったかも知れません」

「よし、明日の朝イチでクリニックに行って、先生にお詫びしよう。出禁だけはなんとか解いてもらえるはずだ」

「よろしくお願いします!!」


ひとりごと

敬意を失ったとき、人は勘違い街道を進み始めます。

かつての小生は、まさに勘違い街道の暴走族でした。(笑)

相手に対して敬意をもって接すれば、どんな厳しい言葉でも聴き入れてもらえるのかも知れません。

敬意と感謝を表せば、思いは伝わるはずです。


bg_chiheisen_brown