今日のことば
【原文】
或(ある)ひと疑う、成王・周公の三監を征せしは、社稷を重んじ人倫を軽んずるに非ずやと。余謂(おも)えらく、然らずと。三叔、武庚を助けて以て叛く。是は則ち文武に叛きしなり。成王・周公たる者、文武の為に其の罪を討せずして、故(ことさら)に之を緩して以て其の悪に党(くみ)せんや。即ち仍(な)お是れ人倫を重んぜしなり。〔『言志録』第101条〕
【意訳】
ある人は、成王と教育担当兼宰相の周公とが、三監を征伐したことは国家を人道よりも重視したのではないかと疑った。私はそうは思わない。成王の三人の叔父である三監が武庚を輔て謀反を起こしたことは、彼らの祖先である文王、武王の御霊に叛いたことになるのであるから、成王と周公がその悪を許さずに討伐したことは当然であって、これこそ人道を守ったことになるのだ。
【一日一斎物語的解釈】
会社(組織)を維持することよりも、人の道を大切にせよと前章では言ったが、それは社員を放任するということではない。もしルールに叛くような行為があった場合には厳重に処分することも必要であり、それが人の道を守ることになるのだ。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、新聞を読みながらブツブツ言っているようです。
「どうしたんですか?」
すかさず石崎君が声を掛けています。
「いや、この記事だよ。上場企業のA社で上司がパワハラで提訴され、それを苦に自殺したらしいんだ」
「自業自得じゃないですか?」
「まぁー、お前は部下目線で見るから、そういう意見になるんだろうな」
「課長は違うんですか?」
「うん、もちろんパワハラ認定されるくらいだから、やり過ぎはあったんだろう。だけど、そのきっかけをつくった部下の側にまったく非がないと言えるのかなぁ?」
「自殺するくらいだから、非を認めたということじゃないですか?」
「それが、遺書には抗議の内容が書き連ねてあったというんだよ」
「そうなんですか」
「この会社は大手だから、それなりに優秀な社員さんが入社するから仕方ないけど、ウチみたいな中小企業はお前みたいなロクなもんじゃないガキが入ってくるんだから、ある程度は厳しさを叩きこまなきゃ組織としてまとまらないんだよな」
「課長、お言葉ですが、課長のご出身大学より私の出身校の方がはるかに偏差値も高いんですけど」
「そういうのを目糞鼻糞を笑うって言うんだよ」
「でも偏差値で10違ったら、相当な差ですよ!」
「細かいことを言うな! とにかく、パワハラを恐れて厳しく指導できなくなったらこの国の繁栄も終焉が近いということだ」
「たしかに、やりたい放題にさせるのは駄目でしょうけどね」
「そうだよ。会社の規則に違反する行為があったり、モラルに欠けることがあったら、厳しい指導が必要だろう」
「上司も大変ですね」
「そこをわかってくれるか、少年よ」
「でも、パワハラって部下の側の度量の広さに依存している部分もありますよね」
「どういうことだよ?」
「神坂課長は幸せですよ。私みたいな心の広い部下がいるから良いようなものの、もっと心の狭い部下ならとっくに訴えられていますからね」
「やかましいわ!!」
ひとりごと
指導とハラスメントの境界線はあって無いようなものです。
受け取る側がどう受け取るかによって、どちらにもなり得るのが現実です。
しかし、明らかに以前よりも叱ることが難しい環境となってきました。
果たしてこれで我が国は、この先も繁栄を維持できるのでしょうか?
「パワハラ加害者のお前が言うな!」という声が聞こえてきそうです。(汗)